平成61994)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

6−共研−41

専門分類

5

研究課題名

進化する系の数理的研究

フリガナ

代表者氏名

イケガミ タカシ

池上 高志

ローマ字

所属機関

東京大学

所属部局

大学院総合文化研究科

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

7 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

経済や生物現象にみられる『進化する系』という特徴を取り上げ理解するためには、いままでとは異なった理解や記述の仕方が求められている。現存するタンパクや真核細胞から経済システムに至る構造にみられる複雑さは、それが作られてきた歴史性を強く反映している。本研究会では計算機による構成論的なアプローチをもとに、その「歴史性」をいかにして数理的に扱い解析していくかを議論する。


本研究は生物に限らず、「進化」する系の数理的構造を明らかにする事を目的としている。特に、経済システムにおける貨幣の発生進化、形成文法システムにおける言語の発生進化、ゲーム・システムにおける戦略の進化、自己複製系の進化、酸素系の発生進化、などについて各々研究を進めた。
これらの進化システムは、主に計算機を用いたシミュレーションによる解析を行ない、次の様な新しい側面が得られている。
(1) 最適化を行なうダイナミクスではない進化。貨幣はエージェント間の信用の確率とともに発生し、そう失とともに崩壊する。文法システムでは、より計算能力の高い文法が進化するのではなく、共通の「bit列」言語が話せ、理解できる文法が進化する。
(2) 外部ノイズの役割。自己複製システムは、外部ノイズにより、「自己」の複製から「他者」の複製のロジックを持ったネットワークへの進化が生じる。進化した後、ノイズを取りのぞいても進化は退行しない。ゲーム戦略の進化では、外部ノイズによって長い「記憶」をもとに次手を決める戦略が進化する。
(3) 外部ノイズのかわりに、力学系のカオスと「形」による多様性の進化の可能性が酸素系のモデルにおいては追及された。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

T.Ikegami,"From Genetic evolation to emergence of game strategies" Physica 75D('94)330.
A.Yasutomi,"The emergence and Collapse of money" Physica 82D('95)180.
T.Hoshimoto and T.Ikegami,"Emergehce of Net grammar in Communicatins Ahents" (Subm'Hed fo Biosystems) May 95
「人工生命−情報と生命とCGの交差点」 第3章 (共立出版平成6年5月) 池上高志 「カオス・進化・ゲーム」 pp.37〜58.
・池上高志・橋本敬 「自己言及コードとその書きかえのダイナミクス」 (日本物理学会,3月).
・安冨歩 「貨幣・しっぺ返し・共産主義」 (複雑系研究会,10月)
・橋本敬・池上敬 「Communication Network of Synbolic Gramnar Systems」 (国際会議「カオスと力学系」,5月)
・池上・橋本 「TMネットワークの進化」 (複雑系・10月)
・山本知幸 「タイル型分子の反応モデル」 (複雑系研究会,10月)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

具体的には、遺伝子のネットワークから熱帯雨林の生態系に渡って幅広く観測される共生進化のダイナミクスを中心に研究を進める。共生に至る数理的な機構はゲーム理論や力学系を用いて研究を始めたところである。ジレンマ状況において共生を保つゲーム戦略や大自由度で弱いカオスによる共生進化機構の存在が示唆されている。
また共同研究を通じて経済における貨幣の生成や市場形態自身の進化のダイナミクスとの関係を探り「進化する系」ということから理解していくことを目指す。このためには大規模なシミュレーションと統計ソフトによる結果の解析が必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

伊庭 幸人

統計数理研究所

多賀 厳大郎

東京大学

時田 恵一郎

大阪大学

橋本 敬

理化学研究所

安富 歩

京都大学

山本 知幸

東京大学大学院