平成262014)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

26−共研−4106

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

7

研究課題名

信用リスクデータの統合化と解析方法の開発

重点テーマ

ファイナンスリスクのモデリングと制御

フリガナ

代表者氏名

ヤマシタ サトシ

山下 智志

ローマ字

Yamashita Satoshi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

117千円

研究参加者数

12 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

金融リスクには市場リスク、信用リスク、オペレーショナルリスクがあり、銀行をはじめとする金融機関の最も大きなリスク要因は信用リスクである。信用リスクの計量化方法には確率論を元にした構造モデルと、経済均衡を元にした誘導モデル、実績データをもとにした統計モデルが存在する。現在、金融機関のリスク管理では、統計モデルによる信用リスク算出が主流であり、実績データの蓄積と有効な統計モデルの構築が進められている。
本共同研究は、信用リスクに関するデータベース構築の方法論と、統計モデル構築の方法論を構築するものであり、以下の論点を対象とした。

1 債権回収率の統合データベースの構築と推計モデルの開発
従来の信用リスク推計はデフォルト確率の推計に特化したものが一般的である。しかし貸手の損失はデフォルト後にどの程度債権を回収するかに依存する。地方銀行5行の協力を得て、実績回収率データを入手することにより、信用リスク全体の計量化=期待損失推定を行った。特に、地方銀行が他県や東京に進出し、比較的大規模な与信を行った場合のリスクについて計量化モデルを開発した

2 大規模信用リスクデータベースの標準化
中小企業の財務データベースは欠損値や異常値が多く、分析を行うときにはその処理作業が膨大である。それが統計モデルの発展を妨げている。本研究では欠損値異常値の前処理を合理的に行い、財務データ特有のデータベース標準化方法を確立するべく研究を行った
特に、欠損値処理で有効であったknn法を異常値補正に適用し、有効性を確認した。また、異常値補正特有のヘアカット法と一般化neglog法の組み合わせについても検討した。

3 確率プロセスモデルを利用した信用リスク計量化手法の高度化
 確率プロセルモデルは信用リスクのプライシングにおいて多用されていたが、リスク管理における計量化手法としての利用は多くない。本研究ではこれまで培われてきた確率プロセルモデルをデータ分析の視点から高度化し、動的な信用リスク計量化を試みる。
これらのテーマは相互に関係しており、それぞれで得た知見を有機的に組み合わすことによってさらに高度で実務的に有用なアウトプットを創出した。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

・学術論文(査読付き)
1) Yamashita, S. and Yoshiba, T. (2014) Analytical Solutions for Expected Loss and Standard Deviation of Loss with an Additional Loan,, Asia-Pacific Financial Markets.(査読済み、オンライン公開)
2) 高橋淳一, 山下智志 (2015) 大規模決算書テータに対する k-NN 法による欠損値補完, JAFEEジャーナル, 2015年3月発行, doi ISBN 978-4-254-29022-6 C3050.

査読付き口頭発表
3) 田上悠太*, 山下智志 (2015) 地域区分と業種を考慮した地方銀行の貸出ポートフォリオの信用リスク分析と EL 推定モデルの作成, JAFEE2014冬季大会(一般講演).

・学術論文(査読なし)
1) Takahashi, J. and Yamashita, S. (2015) Imputing missing values using the k-NN method for extremely large-scale financial statement data, Research Memorandum, 1190.


・口頭発表(国内)
1) 山下智志* (2014) 大規模財務データベースのクレンジング方法の開発, ISMFP研究集会2015(招待講演).
2) 山下智志* (2014) KNN法による大規模財務データベースのクレンジングとその評価, 金融・医療健康合同プロジェクト 「第1回 不完全データベースの対応と処理技術」(招待講演).
3) 山下智志* (2015) 統合与信データベースによる地方銀行のデフォルト債権回収分析, 地方銀行協会 第27回信用リスク管理研究会(招待講演).
4) 山下智志* (2015) 健康科学と金融の横断型連携研究 2値判別モデルにおけるデータクレンジング, 情報・システム研究機構 データ中心科学国際ワークショップ2015(招待講演).
5) 山下智志* (2015) 統計数理研究所共同利用重点研究の概説とねらい, リスク研究ネットワーク年次総会、統計数理研究所リスク解析戦略研究センターシンポジウム(招待講演).
6) 山下智志* (2014) 担保・保証情報を利用したPD・回収率・EL計量化と 保全セグメント問題, 第3回金融シンポジウム「ファイナンスリスクのモデリングと制御」(招待講演).

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

1) 金融・医療健康合同プロジェクト 「第1回 不完全データベースの対応と処理技術
8月8日、統計数理研究所、10人
2) 金融・医療健康合同プロジェクト 「第2回 不完全データベースの対応と処理技術」、8月8日、統計数理研究所、10人
3) 第3回リスク解析戦略研究センター・金融シンポジウム「ファイナンスリスクのモデリングと制御」11月25日、26日、総合学術センター、110人
4) ISMFP研究集会2015「金融データの解析技術と金融数理」 、9月5日、統計数理研究所、13人

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

安藤 雅和

千葉工業大学

大野 忠士

筑波大学

川崎 能典

統計数理研究所

佐藤 整尚

統計数理研究所

津田 博史

同志社大学

西山 陽一

統計数理研究所

逸見 昌之

統計数理研究所

三浦 良造

一橋大学(2012年3月まで) 統計数理研究所統計思考院外来研究員

宮本 道子

秋田県立大学

吉羽 要直

統計数理研究所