| 申請者は、タンパク質のための量子化学計算プログラムProteinDFシステムの開発を行っている。本プログラムは、Gauss型基底関数展開に基づいた密度汎関数法による、
 世界初のタンパク質全電子計算が可能なプログラムである。本研究では、活性中心近傍
 における生体触媒反応をはじめとする、量子論に基づくタンパク質の反応・機能解析を
 行うことを目的とし、今年度は以下の研究について検討した。
 1.タンパク質第一原理ダイナミクスとその統計処理の研究
 ProteinDFをベースにした第一原理分子動力学計算を行う。また、反応に関与するトラ
 ジェクトリーを効率よく探索するための統計的手法について研究を行う。最終的に得ら
 れたトラジェクトリーについては統計的な手法に基づいて解析を行い、熱力学的物理量
 について検討を行う。
 2.タンパク質波動関数データベース作成と統計処理の研究
 系統的にタンパク質を選出し、それらの全電子計算または構造最適化計算を行い、新規デー
 タベースの構築を行う。大量の波動関数データの解析には、統計的手法に基づく新規プログ
 ラムの開発が必須である。さらには本システムと既存のバイオインフォマティクスシステム
 との連携を目指す。
 本年度は11月中旬から貴研究所の統計科学スーパーコンピュータシステム(Altix3700シ
 ステム)を利用させて頂いた。利用した期間が短かったため十分な検討が行えたとは言えない
 が、およそProteinDFシステムのテストを行うことができた。
 まず、貴研究所のAltixにおけるProteinDFプログラムの動作確認を行った。幾つかのサ
 ンプルデータについて計算したところ、東大生研のAltixでの計算結果と大きく異なる結果
 が得られた。この原因については、1月下旬にご連絡したが、intelコンパイラの障害であっ
 た。その後の対策によりこの問題については解決しているが、現在もなお詳細に動作確認を
 行っている。
 タンパク質第一原理ダイナミクスの研究として、ProteinDFをベースにした第一原理
 分子動力学計算を行うためのプログラムを開発中である。テストプログラムの実行環境
 として、Altixシステムを利用している。
 タンパク質波動関数データベース用のデータとして、ProteinDFシステムを使った幾
 つかの50残基程度のタンパク質の全電子計算を行った。結果については、前述のテスト
 に不安が残るため、まだデータベースには反映していない。今後、全電子計算を行うタ
 ンパク質の規模、種類を拡大し、ある程度まとまった段階でデータベースを構築したい
 と考えている。
 
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