平成242012)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

24−共研−2052

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

5

研究課題名

サービス科学と次世代情報基盤による地域情報基盤、統計情報基盤、医療情報基盤に関する研究

フリガナ

代表者氏名

ハヤシ タカフミ

林 隆史

ローマ字

HAYASHI TAKAFUMI

所属機関

会津大学

所属部局

コンピュータ理工学部

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

65千円

研究参加者数

5 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

センサーから収集する各種測定データ、例えば温度センサーによる温度の測定データ(一次データ)は、そのままでは統計情報として利用するのには適していない。そのデータの物理量としての次元とスケールが必要である。センサーから得られた一次データをセンサーから得た後で物理量としての単位をつけて送るのが簡便であるが、センサー単位または、センサーにつながったノードごとに処理を行うのは、いくつかの問題がある。物理単位などがつけられ、変換されたデータは扱い安い反面で、データ量が一次データよりも大きくなる。また変換に問題があった場合、一次データが残っていないと正しいデータを復元することができなくなる。これらのことから、一次データは残しておきながら、データ処理をするときに、適切な物理データに変換することが望ましいと考える。この考えに基づいてシステムやそれを支える基盤を検討した。提案手法では、一次データに、どのセンサーでどのような条件でいつ、どこで測定されたかを示す簡単な情報をリンクさせたものを保存する。リンクされるデータはデータそのものである必要はなくデータと一対一対応するタグでもかまわない。
そのデータに、測定時刻、単位(温度であれば、℃、度など)、データの発信元の情報(センサーのIDなど)が付与されて始めて情報として利用可能となる。本提案の統計処理サービスでは、生のデータを利用可能な情報に加工・調整する機能が第1段階の処理となる。
提案手法では、このタグ付けと情報の転送を、メッセージングルーティングとメッセージフィルタリングという手法によって実現する。この二つの機能は、構造化オーバレイネットワークを仮想的に構築することで実現することができる。仮想ネットワークを用いることで、既存のインターネットそのものには手を加えることなく構築が可能になる。さらに、同一の物理ネットワーク上に複数の相異なる仮想化ネットワークを構築することが可能である。これによって、同一の物理ネットワークを用いながら、種々の目的ごとに、個人情報や機密情報をセキュアに保護することが可能となる。

本年度は、この提案手法に、以下の2点の追加することを検討した。
・ 提案手法で用いるセンサー、センサーデータ、関連情報、関連サービスを動的かつ有機的に結びつけるために、グラフデータベースを利用した管理、可視化システムとそのアーキテクチャの検討
・ センサーデータについてその誤差の情報が、後段の統計処理を含めたデータ処理で適切に利用できるための枠組みの検討
 一つ目のグラフデータベースは、1970年代半ばに検討が始まったもので、Entity-Reality モデルに基づいたリレーショナルデータベースでは表現が困難な様々なデータやデータ属性間の関係を柔軟に表現できるものである。さらにグラフデータベースが扱う関係は動的に変更可能である。グラフデータベースは、数年前まで、計算機の性能(演算性能、メモリ量など)の制約や適当な実装がなかったため、そのアーキテクチャへの高い評価にも関わらず、利用範囲が限定されていた。会津大学では、開学当初(1993年開学)から、グラフデータベースを利用していたことから、積極的にグラフデータベースを活用することにした。本課題においては、センサーデータと、各種の情報(センサーの機種、ファームウェアやソフトウェアの種類とバージョン、設置場所、設置環境、測定時間)などや、統計処理結果などセンサーデータを処理した結果と、そのデータ処理に用いたセンサーやソフトウェアなどを関連づけるものである。本年度は、当該システムとそれを支える情報基盤についての概念設計と基本部の試作を行った。
 二つ目の誤差情報は、センサーの機種、設置環境、設定ごとに、異なる可能性がある。誤差範囲が異なるデータを単純に、同一の統計処理をするのは好ましくないと考える。そのため、統計処理などのデータ処理を行うにあたり必要な誤差情報をどのように集計、保存、利用するのが望ましいのかを検討することとした。データ処理結果も他のデータ処理で用いられる可能性があることを考えると、データ処理によって生じうる誤差(アルゴリズムそのものに起因する誤差、数値誤差など)も保存し利用できるようにすべきである。従来のシステムの多くは、このような誤差情報の保存や、誤差の伝搬をどのように取り扱うべきかを考慮していない。我々は、ネットワーク上で、複数の情報を動的に組み合わせることのできるメッセージング・ネットワーク(前述のメッセージルーティングとメッセージフィルタリングをその主な機能とする仮想ネットワーク)を用いることを前提とした枠組みの検討を開始した。本年度は、その概念設計を中心に行った。
 これらの二つの研究内容については、計測制御学会の年会(SICE 2013)に投稿した(現在査読審査中)

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1. Takafumi Hayashi, Hideyuki Fukuhara, Jiro Yamazaki, Yodai Watanabe, Junya Terazono, Taro Suzuki, Toshiaki Miyazaki, Masayuki Hisada, Tetsu Saburi, Hajime Tokura, Atsushi Kara, and Jiro Iwase, "A Network-Centric Approach to Low-Power Consumption Sensor-network with Related Service Integration," SICE 2012, 2012
2. Takafumi Hayashi, Atsusi Kara, Hideyuki Fukuhara, Hideyuki, Tetsu Saburi, Masayuki Hisada, Toshiaki Miyazaki, and Jiro Iwase, "Coping with the Complexity of SOA Systems with Message Forensics," Proc. of the 26th International Conference on Advanced Information Networking and Applications Workshops (WAINA), 2012, pp. 732-737, 2012, IEEE
3. 寺薗淳也, 山崎治郎, 久田雅之, 戸倉一, 鈴木太郎, 渡辺曜大, 矢口勇一, 成瀬継太郎, 宮崎敏明, 福原英之, 岩瀬次郎, 林隆史, "グラフデータベースを用いたサービス疎結合支援基盤," 第一回社会情報学会研究大会, 2012

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究会は開催しませんでした。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

大野ゆう子

大阪大学

甘泉 瑞応

会津大学

田中 秀幸

東京大学

椿 広計

統計数理研究所