平成242012)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

24−共研−2025

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

6

研究課題名

人の言語行動を規定する社会的要因の研究

フリガナ

代表者氏名

イシカワ ユカ

石川 有香

ローマ字

Ishikawa Yuka

所属機関

名古屋工業大学

所属部局

工学研究科

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

44千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

テキストの文体特徴は、話し手の特性、発話の目的や状況、対象とする聞き手の特性などによって変化する。話し手は、トピック、書き言葉・話し言葉などのコミュニケーション媒体、場のフォーマリティに加えて、性別、年齢、職業、能力や社会的地位といった聞き手の属性によっても、意識的無意識的に適切な文体を選択している。本研究では、「要求」や「拒絶」など特定の発話行為に注目し、多様な属性を持つ話し手が、一定の制約の中で選択したテキストを対象に、それぞれどのような言語特徴を有しているのかを調査し、話し手および聞き手の属性と、テキストに表れた言語特徴との関係を、統計的指標を用いて明らかにすることを目的とする。
 具体的には、特定の語彙やコロケーションの頻度など、テクストに内在する言語特徴を手掛かりとし、話し手の属性と聞き手の属性、コミュニケーションの場の構成要素を統計的手法を用いて分析する。なお、ここでは、語彙やコロケーションの使用頻度に加えて、音韻変化などの音韻論的特徴も分析対象とする。また、専門用語や隠語など、固有のテクスト・ジャンルのみに出現する言語特徴に焦点をあてるのではなく、むしろ、高頻度使用語または語群を調査の対象とし、表記上のゆらぎも対象にふくめる。分析の結果を踏まえて、人の言語行動に影響を与えている社会的要因を決定する手法を明らかにすることを最終的な目標とする。
 本研究によって、話し手・聞き手の属性が特定の発話行為におけるテキストの言語学的特徴に及ぼす影響が客観的指標によって明らかにされた場合、得られた指標はテキスト研究・コーパス研究・コミュニケーション研究・社会言語学の研究分野は言うまでもなく、言語教育の分野においても応用的に活用が可能な指標となり得る。たとえば、会話指導の分野では、教師は指標をもとに客観的に教材選定を行うことができる。また、話し手と聞き手の属性を意識し、状況に応じた社会言語学的能力の育成を行うことも可能となる。ライティング学習においては、特定の場面の言語特徴の提示により、学習者が、テキスト特性への意識化を促進することができるので、より効果的な活動が期待できる。リーディングなど、理解能力の育成においては、書き手属性や、発話目的、テキスト内の言語特徴に注意を向けさせることによって、学習者がより的確なメッセージの解読方法を学ぶ機会が高まる。さらには、それぞれのデータにおいて、話し手・聞き手属性など、コミュニケーションの場に関与する要因を取り出し、それらを手掛かりに、テキストの言語特性を統計的に分析する手法を示すことで、学習者が自らテキスト分析を行うことも可能となり、特定の場で表れやすい、特定の言語特性を認識することも可能となる。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

平成24年度統計数理研究所共同利用研究(研究課題番号24 共研 2025)統計数理研究所共同研究リポート297「言語テキストの統計的分析」において、
「チームスポーツに関わる言語使用における熟達の探索」(浅井 淳)、
「語構成条件による阻害音有声化の確率資料」(浅井 淳)、
「語連鎖分析による学習者グループ特性の探索?学習者の習熟度と言語的文化的要因の交差?」(石川有香)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

セミナーシリーズ「言語研究と統計2013」を、2013年3月27-28日に、共同で、東京都立川市の統計数理研究所で開催。

石川有香:書き手の特性を表す3語連鎖と4語連鎖
浅井淳:なでしこ心理(2)
を発表

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

浅井 淳

大同大学

前田 忠彦

統計数理研究所