平成242012)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

24−共研−2

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

細胞幾何学モデル

フリガナ

代表者氏名

ホンダ ヒサオ

本多 久夫

ローマ字

HONDA HISAO

所属機関

兵庫大学

所属部局

健康科学部

職  名

教授

 

 

研究目的と成果の概要

【目的】
生物の形態形成の機構を解明する。多細胞生物は細胞およびその分泌物からできている。細胞のふるまい(移動、分裂、消滅、分泌など)を記述する運動方程式があれば、形態形成研究に有力な道具となる。細胞の集まりを空間に隙間なく充填した多面体や多角形とみなすと、これらの形を決める頂点群の動きを知れば、多細胞体の形の変化が求められることになる。したがって、我々は細胞集団内のすべての頂点の動きを計算できる運動方程式をつくりあげた。これを使って生物の形の形成や細胞パターン形成の機構を解明する。 
【結果】
・前年度に引き続きハエ胚が行う気管形成開始時の上皮陥入を調べた。シミュレーションの初期条件として、角柱細胞200個が一層に並んだ上皮シートをつくり、ここに陥入が起こるための細胞の性質を検討している。性質として、(1) 上皮細胞のアピカル面(多角形を呈している)の面積が陥入中心付近では小さく、中心が離れたところでは大きくなる、(2) 中心付近の細胞が胚内部に移動する、(3) アピカル面の辺のうち陥入中心に対して接線方向の辺が強く収縮しアーク状のパターンができるなどが陥入に影響している。陥入そのものについては(1)と(2)が強く働いており、現実をよくシミュレーションできる。そこでそれぞれの性質を生ずる機構を考えているのだが、(2)について、胚のFGF分子が細胞の移動を誘発すると考えたいところだが、これはFGFをつかった実験結果と合わない。細胞の移動がどんなメカニズムで起こるのかがいま問題である。
・脊椎動物の陥入にあたる神経管形成について、3Dではなく2DでのVertex dynamicsをつかって、上皮細胞パターンが特異なパターン(梯子状)を示す機構をシミュレーションした。
【まとめ】
 シミュレーションによって、ハエ胚が行う気管形成開始時の上皮陥入に必要な細胞の性質を絞り込めたのだが、実際の細胞の持つ機構との対応がいまのところ明確でない。

【発表】
本多久夫「袋構造からみた哺乳類の形態形成」
第52回日本先天異常学会学術集会イブニングセミナー
『視点を変えて発生現象を観察すると』東京女子医科大学弥生記念講堂7/7, 2012

本多久夫「細胞モデル」
シンポジウム『生物を理解するための数理的手法』(オーガナイザー、野下浩司)
第22回日本数理生物学会大会 岡山大学9/11, 2012

H. Honda, Three-dimensional cell model for tissue morphogenesis
In Banff Workshop of <Tissue Growth and Morphogenesis: from Genetics to Mechanics and Back> at BIRS (Banff International Research Station for Mathemaical Innovation and Discovery), Banff, Canada, 7/25, 2012.