平成132001)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

13−共研−2026

専門分類

3

研究課題名

海底地震計に記録された膨大な制御地震記録の効果的な抽出法の開発

フリガナ

代表者氏名

タカナミ テツオ

高波 鐵夫

ローマ字

Takanami Tetsuo

所属機関

北海道大学

所属部局

大学院理学研究科

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

研究目的:
北海道大学地震火山研究観測センターでは、地球の構造とその発達史を探るために、数千メ
ートルの海底下に数十台の海底地震計を設置し、海上の実験船に備え付けたエアガンシステ
ムで制御しながら船尾に曳航させたエアガンから一定間隔に高圧の音波を発射させ、それが
地殻及び上部マントルを伝播して、再び海底に戻ってきた各種の屈折波や反射波を海底地震
計でるという調査を行っている。これらの波群の走時や振幅の情報から地下の速度分布を知
ることができる。しかし、膨大な制御地震記録には海底下での各種の雑音や、地震波伝播経
路上に存在する強い減衰によってS/Nが非常に小さくなり、地下深部から伝播してきた貴
重な地震記録の解析を困難にさせることがしばしばある。
すでに我々は、統計数理研究所との共同研究(例えば、Kitagawa and Takanami,1985)の
なかで、状態空間モデルを構築し、最適な局所尤度を計算しながら雑音に埋もれた微弱な地
震波信号を抽出する効果的な手法を提案してきた。
ここでは、これらをさらに発展させ、海底地震計に記録された膨大なデータからなる制御地
震記録群に合った信号抽出法を研究し、より精確な地球の発達史と構造を求めるための新し
い海底地下構造探査法を開発することを目的とする。
研究成果:
この研究に用いられた海底地震計のデータは,北海道大学とノルエーのベルゲン大学との共
同研究として行った,1998年および1999年北大西洋の海底地下構造調査で得れれた
ものである。一回の実験で,約40台の海底地震計を,深さ約2000mの深海底に10
15km間隔に設置した。船の後ろにはエアーガンを装備し,海底地震計の測線に沿って船
を走らせながら約70秒間隔でエアーガンの圧搾空気を爆発させ,水中,および地下深部に
伝播した信号を海底地震計で記録した。観測された記録は,1秒間に125サンプルでA/D
変換したデジタル波形記録である。各海底地震計には4チャンネルの成分があり,最終的に
得られた時系列の数は7500にも及ぶ膨大なデータ量である。海底の地下構造を調査する
際,よく用いられる手法にτ p法がある。これは多成分時系列データから目的の信号を見
つけだす方法であるが,実際はτとpの正規性の欠如のために十分な分離がえられない。
そこでこの研究では,統計的モデルにもとずいた別のアプローチを試みた。すなわち,海底
地震計のアレイから得られた多成分時系列から地下構造に関する情報を引き出すための統
計的モデルの開発を試みた。とくに1つの重要な問題点は,地下の速度不連続で生成された
屈折波と反射波を観測記録から検出することである。この目的のために,まずはじめに
Kitagawa and Higuchi(1998)の時系列分解モデルを適用した。つぎに直接波,反射波,屈
折波などの伝播の遅れを考慮した空間モデルを作った。そして最終的には時系列モデルと空
間モデルを結合させ,時空平滑を行った。
統計的モデルでは,そのモデルが真のモデル,または真のモデルの生き写しに限り無く近い
であると,必ずしも信じる必要はない。むしろ,幾つかの情報を重ね合わせることによって
有用な情報を導き出す手法と考えるべきである。これに関連して,Akaike(2001)は有益な
情報とは,しっかりした理論,経験にもとづく知識,そして今あるデータという3つのタイ
プに分けているが,今回の場合は,しっかりした理論とは,弾性波理論であり,スネルの法
則等を意味する。他方,近似的な層構造,水深,水中での波の速度などはこの地域で得られ
た知識として考えることができる。ここではこの情報を用いて空間モデルを導き出した。こ
の研究では,Kitagawa and Takanami(1985)とKitagawa and Higuchi(1998)による状態
空間モデリングでのスムージングを反射波,屈折波を導き出す際に用いた。また多成分地震
記録間の時間差を用いて,空間モデルを導き出した。この空間モデルと時系列モデルを重ね
合わせて空 時 平滑化を行った。
これらの手続きを実施することによって,地下構造を反映した,反射波や屈折波がより鮮明
に抽出されることが理解された。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

北川源四郎,高波鐵夫,島村英紀:海底地震計データによる新しい地下構造探索の試み,発見科学,大坂,Oct.
27,2000。
北川源四郎,高波鐵夫,他:海底地震計データによる地下構造解析,統計数理セミナー,Feb 14,2001。
T.Takanami and G.Kitagawa,Modern signal extraction methods in computational seismology,J.Fac.,
Sci.Hokkaido Univ.Series ?(Geophysics)11,4,725-738,2000.
K.Kitagawa,T.Takanami,N.Matsumoto:Signal extraction problems in seismology.International
Statistical Review,69,129-152,2001.
G.Kitagawa,T.Takanami,A.Kuwano,Y.Murai,and H.Shimamura:Extraction of Signal from high
dimensional time series:Analysis of ocean bottom seismograph data,Progress in Discovery Science,
eds by S.Arikawa and A.Shinohara,Springer-Verlag,449-458,2002.
G.Kitagawa and T.Takanami:Extraction signal of small seismic signal by state space modeling,Lecture
Notes in Earth Sciences,eds by T.Takanami and G.Kitagawa,Springer-Verlag,1-12,2002(in
printing).
T.Takanami and G.Kitagawa:Multivariate time series model to estimate arrival times of S waves,Lecture
Notes in Earth Sciences,eds by T.Takanami and G.Kitagawa,Springer-Verlag,13-39,2002(in
printing).

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

北川 源四郎

統計数理研究所

姜 興起

旭川大学

島村 英紀

北海道大学