平成192007)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

19−共研−2024

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

6

研究課題名

現代アメリカ英語知識人話者のスピーチスタイルと語学的特徴についての研究

フリガナ

代表者氏名

イエイリ ヨウコ

家入 葉子

ローマ字

Yoko IYEIRI

所属機関

京都大学

所属部局

文学研究科文献文化学専攻英語学英米文学専修

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

100千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究は、平成18年度に一般研究1として遂行した共同研究を継続するものである。昨年度に引き続き、1990年代のアメリカ英語の話し言葉コーパスThe Corpus of Spoken Professional English (CSPAE)(ホワイトハウスの記者会見、大学での会議、研究者の会合2種を含む)を一次資料として使用し、その語法的特徴、スピーチスタイルの特徴、談話の流れの特徴などを分析した。主要な研究成果は、以下の通りである。
まず、存在文(there + be) を扱った研究では、CSPAEが全体としてどの程度フォーマルな英語からなるコーパスであるかについての示唆を得ることができた。すでにthere’sのような単数形の動詞を用いた導入のあとに複数名詞が来る現象は英語学一般で議論されているが、今回の調査では、このような数の不一致が、CSPAEではきわめて少ないことが明らかになった。したがって、同コーパスは、全体としてかなりフォーマルな英語からなるということができる。この調査結果は、コーパスに含まれる場面や話者の性別の違いを分析する際の前提とすることができるものである。
次に、形容詞を修飾するveryやreal/reallyを分析し、場面による語の選択の違い、話者の性差による統語的な差異を明らかにした。具体的には、veryを使用するかreal/reallyを使用するかが、スピーチスタイルと密接に関わっていること、また叙述用法の形容詞を修飾するか限定用法の形容詞を修飾するかという点については、男女差が見られるという点を示した。女性に叙述用法が多いのは、女性の議論の進め方と関係しているであろう。
さらに本研究では、接続詞や発話の冒頭に現れる語の性質を分析し、文や発話の「つなぎ」に焦点を当てた。これらのテーマを扱った一連の論文で明らかになった点は、一見無意識に使用しているように見える接続詞や発話冒頭語の使用状況もまた、場面や話者の性差と密接に関わっているという点である。特に興味深いのは、女性の方が全体として接続詞の使用が多く、特に発話の冒頭で、前の話者との「つなぎ」を重視する傾向が見られる点である。ただし、男女差は、自由に議論をすることができる会議の場面に特徴的で、ホワイトハウスの記者会見や形式的な報告の場面では、あまり顕著ではない。
話し言葉の研究は、その一次資料の作成が容易でないなどの理由から、比較的研究が遅れてきた分野である。CSPAEは、コーパスとしての規模は大きいとはいえないが、場面の違いや話者の性別の違いによる話し言葉の傾向を明らかにする上で有用な資料である。本研究では、この点を再確認すると同時に、スピーチスタイルと言語の関係について、上に述べたように一定の学術的貢献をすることができたといえる。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

<論文>

Yaguchi, Michiko, Yoko Iyeiri, & Yasumasa Baba. 2008. “The Use of the First and the Second Person Pronouns by American English Speakers in Formal Meetings: An Analysis of the Corpus of Spoken Professional American English”. Setsunan Journal of English Education 2: 33-51.

家入葉子・家口美智子・馬場康維. 2008.「接続詞の使用状況から英語のスピーチスタイルの違いを探る??The Corpus of Spoken Professional American Englishの分析を通して??」『現代アメリカ英語知識人話者のスピーチスタイルと語学的特徴についての研究』(統計数理研究所共同研究リポート 214)pp. 1-23. 東京: 統計数理研究所.

家入葉子・家口美智子・馬場康維. 2008.「専門性の高い会話における発話導入語とスピーチスタイル??The Corpus of Spoken Professional American Englishの分析から??」『現代アメリカ英語知識人話者のスピーチスタイルと語学的特徴についての研究』(統計数理研究所研究リポート 214)pp. 25-50. 東京: 統計数理研究所.

家口美智子・家入葉子・馬場康維. 2007.「存在文(there+be)における数の一致と公での場の会話スタイル??Corpus of Spoken Professional American Englishの分析から??」『摂南大学外国語学部 摂大人文科学』15: 93-105.

家口美智子・家入葉子・馬場康維. 2008.「形容詞を修飾する強意語 very と real/really の使用に関するジェンダー差について??The Corpus of Spoken Professional American Englishの分析から??」『現代アメリカ英語知識人話者のスピーチスタイルと語学的特徴についての研究』(統計数理研究所共同研究リポート 214)pp. 51-67. 東京: 統計数理研究所.

家口美智子・家入葉子・馬場康維. 2008.「高頻度語の分析によるアメリカ会議英語のスピーチスタイルの考察」『現代アメリカ英語知識人話者のスピーチスタイルと語学的特徴についての研究』(統計数理研究所共同研究リポート 214)pp. 69-88. 東京: 統計数理研究所.


<学会発表>

Iyeiri, Yoko, Michiko Yaguchi, & Yasumasa Baba. "Turn-initial Words in The Corpus of Spoken Professional American English". ICAME 28. Stratford-upon-Avon. 26 May 2007.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

馬場 康維

統計数理研究所

家口 美智子

摂南大学