平成252013)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

25−共研−4102

分野分類

統計数理研究所内分野分類

g

主要研究分野分類

5

研究課題名

伝説的な歴史記録を含む水域外力データの極値解析法

重点テーマ

統計数理による減災・復興

フリガナ

代表者氏名

キタノ トシカズ

北野 利一

ローマ字

Kitano Toshikazu

所属機関

名古屋工業大学

所属部局

社会工学専攻

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

87千円

研究参加者数

4 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

社会的に注目されやすい伝説的記録を加えると,経験度が倍増し,鮮度の低下も抑制されて,経過時間に対する外挿の限界も延伸されるであろうと期待される.しかし,その期間長が不明であるために,付与すれば却って不利になる.伝説的記録による経験度の増分はわずかであり,その未知となっている期間の長短に依存しないのは驚嘆すべき特性である.また,経過時間に対する外挿の限界が後退する.それは,観測記録の鮮度のピークが,より遠い過去に移動することが原因になっている.このような特性を理解するためには,信頼区間を示すだけでは不十分であり,経験度の概念が不可欠であることも認識できた.伝説的記録の活用への望みが無いわけではない.その期間長を強制的に与えて,極値に漏れがあるとモデル化することも可能であろう.これは今後の課題とする.
 また,津波マグニチュードについても,1926 年以降の近代機器による験潮記録に加え,1498年-1893年における歴史的な記録を加えた場合に,Coles & Sparks (2006) による選択関数を部分的に取り入れた手法で解析した.しかしながら,その選択関数を全面的に取り入れると,母数推定における最適化計算が収束しないため,これについては今後の課題とする.また,歴史データには,測定値に誤差がつきものである.それゆえに,測定値における丸めに伴う極値が従う分布の影響を検討することも重要となる.この観点から,大きな値ならびに小さな値の2番目の桁数の分布についての理論検討を行った.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

北野利一・信岡尚道・喜岡 渉,観測期間長の曖昧な伝説的記録を含む水域外力の極値統計解析,土木学会論文集B2(海岸工学),Vol. 69,No. 2,p. I_111-I_115, 2013.11.

高橋倫也,津波マグニチュードのデータ解析,統計数理研究所 共同研究リポート 327,極値理論の工学への応用 (11),p.18-25.

Shimura, T., A numerical characteristic of extreme values, Statistics and Its Interface, Vol.7, (in press).

Shimura, T., Law of small random numbers, The Institute of Statistical Mathematics Cooperative Reserch Report 327, pp.45-52.

Kitano, T., Standing at the edges on extrapolation to extremes with the degree of experience (Abstract only), presented in the 8th Conference on Extreme value Analysis, Shanghai, China, July 8-12, 2013.

Shimura, T., Discretization of distributions in the maximum domain of attraction (Abstract only), presented in the 8th Conference on Extreme value Analysis, Shanghai, China, July 8-12, 2013.

信岡尚道・鍋谷泰之・住岡直樹・北野利一,極値統計法に基づく極低頻度までを対象とした津波リスクマップの基礎的研究,土木学会論文集B2(海岸工学),Vol. 69, No. 2, p. I_1351-I_1355, 2013.11.

北野利一,伊勢湾台風級の高潮と確率潮位,第49回 水工学に関する夏期研修会(Bコース),土木学会,海岸工学委員会,2013年8月26-27日(名古屋工業大学,参加申込み数 111名).

北野利一,招待講演「想定力をつけるために過去の経験を建設事業に活かすには?」,合同安全講習会(木曽川上流事務所,岐阜国道事務所,越美山系砂防事務所,岐阜県県土整備部による共催),
2013年6月7日(サンレイラ岐阜・大ホール,参加者126名).

北野利一,防災の日に思う - 甚大災害が生じる確率は希少か?,中部経済新聞社/2013年8月29日掲載.

北野利一,アダムの創造そして大洪水 - 地上と天空をつなぐ道具の限界,中部経済新聞社/2014年1月14日掲載.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

このテーマでの研究会は,開催していない.

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

志村 隆彰

統計数理研究所

高橋 倫也

神戸大学