平成252013)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

25−共研−2031

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

疾病に対する集団戦略・高リスク戦略のためのコミュニティ評価指標の実用化

フリガナ

代表者氏名

ナカムラ タカシ

中村 隆

ローマ字

Nakamura Takashi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

30千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究は、疾病に対する集団戦略(住民全体への対策)と高リスク戦略(個々の疾患に対して高いリスクをもつ集団への対策)に向けた指標の実用化に向け、都道府県の保健医療施策に活用するための方法論の確立を目指している。

コミュニティ評価指標には、死亡動向の変動に対する年齢・時代・世代効果が有用である。これまで申請者らは、脳血管疾患に主眼を置き、中村のベイズ型コウホートモデルによる分析に基づいて、現時点で最も悉皆性・蓄積性の高い死亡動向の変動要因について検討を重ねてきた。その過程において、時代効果と世代効果に、それぞれ集団戦略と高リスク戦略の成果が反映されることを見出した。これらの性質を利用し、各効果のパタンの特徴や、年齢効果・世代効果と2つの時代効果シナリオ(現行の集団戦略が継続あるいは中断された場合)をふまえた将来動向は、各都道府県で集団戦略を強化する必要性やアプローチが必要な年齢・世代の検討に役立てることができる。

そこで、地域の実情に即した集団戦略や高リスク戦略に活用するうえで検討が必要な内容を確認するため、平成23年度及び24年度はA県の保健師からデータ提供を受けて、当該県で優先度の高い死因(悪性新生物・心疾患・脳血管疾患・自殺)についてコウホート分析を行った。

平成25年度は、疾患とは異なる背景要因をもつ「自殺」に焦点をあてて分析を全都道府県に拡大し、各効果のパタンの特徴を主成分分析により抽出した。これらを指標にして全国の分布状況を確認した結果、いずれの効果もまず男女差、次に地域性のあることが示された。本結果を自殺予防戦略に活用するためには、さらに年齢x時代の交互作用効果も含めた検討を行い、自殺に関する保健医療対策の変遷、社会・生活状況の歴史的変化や社会統計との照合に基づいて、男女差・地域差の生じた背景を解明する必要がある。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

平成25年度は,学会・研究会において1)〜2)の発表を行った。

1)三輪のり子・中村隆・田中貴子・大江洋介・大野ゆう子(2013). 都道府県別にみた自殺率に対する年齢・時代・世代要因の影響, 日本公衆衛生雑誌,60, 10, 569.

2)三輪のり子・中村隆・大江洋介・大野ゆう子(2013). 都道府県別自殺率の年齢・時代・世代効果からみた特徴, 第3回自殺リスクに関する研究会予稿集,13-18.

平成24年度以前の情報源:

3)三輪のり子・田中貴子・中村隆 (2012). 秋田県における自殺の死亡動向に対する年齢・時代・世代要因の影響,日本公衆衛生雑誌,59, 10, 434.

4)三輪のり子・田中貴子・中村隆 (2011). 秋田県における三大生活習慣病の死亡動向に対する年齢・時代・世代要因の影響,日本公衆衛生雑誌,58, 10, 450.

5)三輪のり子・中村隆 (2010). 47都道府県における脳血管疾患死亡の2035年までの将来動向,日本公衆衛生雑誌, 57, 10, 398.

6)Miwa, N., Nakamura, T. and Ohno, Y. (2009). Prefectural and Japan future time trends in the cerebrovascular disease mortality projections, based on age-period-cohort analyses, Asia Pacific Association for Medical Informatics 2009, Proceedings, P-62.

7)Miwa, N., Nakamura, T. and Ohno, Y. (2009). New indicators for the evaluation of community policies based on period and cohort effects in cerebrovascular disease mortality rates, Japan Hospitals, 28, 79-85.

8)三輪のり子・中村隆・大野ゆう子 (2008). 脳血管疾患死亡におけるPeriod効果とCohort効果の対策評価指標としての検討(2), 日本公衆衛生雑誌, 55, 10, 13.

9)Miwa, N., Nakamura, T. and Ohno, Y. (2007). Constructing indicators to evaluate community policies based on period and cohort effects on Cerebrovascular disease mortality rates, The 39th Conference of the Asia-Pacific Academic Consortium for Public Health, Abstract Book, 191-192.

10)三輪のり子・中村隆・大野ゆう子 (2007). 脳血管疾患死亡におけるPeriod効果とCohort効果の脳卒中対策評価指標としての検討, 日本公衆衛生雑誌,54, 10, 417.

11)三輪のり子・中村隆・成瀬優知・大江洋介・大野ゆう子 (2006). わが国における20世紀の脳血管疾患死亡率の変動要因と今後の動向, 日本公衆衛生雑誌,53, 7, 493-503.

12)三輪のり子・中村隆・大野ゆう子 (2006). 都道府県別にみた脳血管疾患死亡率のAge-Period-Cohort効果---6都道府県における試み---, 日本公衆衛生雑誌, 53, 10, 605.

13)三輪のり子・中村隆・成瀬優知・大江洋介・大野ゆう子 (2006). 脳血管疾患の病型別死亡数の将来推計---ベイズ型ポアソンAge-Period-Cohortモデルに基づく---, 第26回医療情報学連合大会抄録集(CD-R), 158 (P18-1).

14)三輪のり子・中村隆・成瀬優知・大江洋介・大野ゆう子 (2005). 日本の脳卒中死亡数の2050年までの将来推計, 日本公衆衛生雑誌, 52, 8, 611.

15)三輪のり子・成瀬優知・中村隆・大江洋介・大野ゆう子 (2004). 脳卒中死亡率のAge-Period-Cohort分析(1報)脳梗塞, 日本公衆衛生雑誌, 51, 10, 509.

16)成瀬優知・三輪のり子・中村隆・大江洋介・大野ゆう子 (2004). 脳卒中死亡率のAge-Period-Cohort分析(2報)脳出血・クモ膜下出血, 日本公衆衛生雑誌, 51, 10, 509.

17)三輪のり子・成瀬優知 (2004). 出生コホート分析を用いた脳卒中罹患率の検討---富山県脳卒中情報システムより---, 厚生の指標, 51, 11, 10-16.

18)三輪のり子・成瀬優知 (2003). 出生コホート法を用いた脳卒中発症率の比較---富山県脳卒中情報システムより---, 日本公衆衛生雑誌, 50, 10, 517.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

開催はありませんでした。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

三輪 のり子

関東学院大学