平成282016)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

28−共研−4311

分野分類

統計数理研究所内分野分類

i

主要研究分野分類

8

研究課題名

湖沼生態系レジームの不確実性を考慮した農業環境政策モデルの開発

重点テーマ

リスク科学のフロンティア

フリガナ

代表者氏名

タナカ カツヤ

田中 勝也

ローマ字

Tanaka Katsuya

所属機関

滋賀大学

所属部局

環境総合研究センター

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

174千円

研究参加者数

5 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究では、我が国の農業環境政策の主軸である環境直接支払(環境保全型農業に取り組む農家を対象に交付金を助成する政策)が、湖沼の水棲生態系に与える影響とその費用対効果を分析した。対象は琵琶湖最大の内湖である西の湖とその流域(長命寺川流域)に設定し、(1)経済モデル、(2)流域モデル、(3)湖沼モデルによる学際型政策評価モデルを構築して分析を試みた。

環境直接支払が農家の環境保全型農業の取り組みに与える影響と、その際必要となる政策費用については,長命寺川流域の農家を対象としたアンケートを実施し、コンジョイント分析により推計した。陸域での栄養塩の流出過程は、分布型流出解析モデルである AIST-SHANELモデルにより、農法変化による流出量の変化量を定量化した。湖沼生態系については、Comprehensive Aquatic Systems Model(CASM)モデルにより、栄養塩流出を通じた水棲生態系の食物連鎖への動的変化の長期予測をおこなった。

以上の3モデルを統合した分析結果によれば、環境直接支払における支払水準の上昇は環境保全型農業の取り組み面積を拡大し、結果として西の湖に流入するリン・窒素などの栄養塩量を大きく削減する効果が示された。ただし、栄養塩流入の減少が湖沼の水棲生態系を回復するためには、少なくとも流域全体の4割の農地が環境直接支払に参加することが必要であり、政策も長期(最低でも15年)に渡り実施することが必要である。以上の結果から、すでに実施されている現行の環境直接支払制度(環境保全型農業直接支払交付金)は、取り組みとして不十分であり、その規模と期間を再検討する必要があると考えられる。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

田中勝也, 川口智哉, 木村誠, 永松由有(2017)「湖沼生態系のレジームシフトにおける環境保全型農業の役割:滋賀県西の湖における学際的モデル分析」第64回日本生態学会大会(2017年3月14-18日, 早稲田大学)

京井尋佑, 田中勝也(2017)「滋賀県における環境保全型農業直接支払交付金の空間偏在と生態学的影響」第64回日本生態学会大会(2017年3月14-18日, 早稲田大学)

山下英輝, 田中勝也, 藤井吉隆, 八木洋憲(2017)「環境直接支払における農家の採択要因の再考」日本農業経済学会2017年度大会(2017年3月28-29日, 千葉大学)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

該当しない。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

川口 智哉

株式会社日水コン

木村 誠

株式会社日水コン

吉本 敦

統計数理研究所