平成142002)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

14−共研−2030

専門分類

6

研究課題名

統計的手法による地殻変動データの解析

フリガナ

代表者氏名

ワクイ センイチロウ

涌井 仙一郎

ローマ字

Senichiro Wakui

所属機関

気象庁

所属部局

地震火山部地震津波監視課精密地震観測室

職  名

主任研究官

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

7 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

地殻に働く応力による地面の伸び縮みや傾きを観測する測器として伸縮計や傾斜計などがあるが、これらの
記録には、通常、応力による信号以外に温度や気圧、および降雨の影響などさまざまな要因による変化が重な
って記録される。テクトニックな応力による地殻活動を正しく把握するためには、そのような変化が含まれた
原記録から、テクトニックな応力以外の要因、例えば気象要素によって引き起こされている変化など、を可能
な限り取り除くことが望ましい。本研究では、気象庁精密地震観測室で観測されている地殻変動データに現れ
る降雨の影響を、より効率的かつ客観的に取り除く手法の開発を試みる。
 産業技術総合研究所(旧地質調査所)では、地下水データに現れる降水応答の除去を線形自己回帰モデルを
用いて行っていた[参考文献1]。気象庁でも、東海地域に設置されている体積歪計に対してこの手法を適応し、
降水直後から数日間にわたる比較的短期間の降水応答の補正を試みており[参考文献2]、ある程度の効果が確
認できたため、今後は降水補正の処理をオンライン的に行う計画を進めている。今回は、当室の石英管伸縮計
で観測された歪データに現れている降雨の影響を、この線形自己回帰モデルを用いた場合どの程度まで取り除
くことが可能かを試みた。
 今回は、基線長100mの石英管伸縮計の歪データ南北成分(以下、NS100)と基線長100mの歪データ東西成
分(以下、EW100)を、それぞれ期間2001年1月1日から12月31日までの1年間について解析を行った。解
析方法は、まず始めにBAYTAP-Gを用いて原記録から潮汐成分を除去した後、カルマンフィルターを用いて長
周期トレンドを推定する。そして、潮汐補正データから長周期トレンドを除去し、残った成分を降水応答によ
る変化と見なして自己回帰モデルのフィッティングを行った。なお、自己回帰応答係数の次数は、気象庁で用
いていた数(最大40次)と同じに設定した。
 結果は、基線長100mの歪観測データの南北成分(以下、NS100)では、数日以下の短期間の降水応答につい
てはある程度有意な効果が見られたものの、東西成分の歪観測データ(以下、EW100)については、補正の効果
はほとんど見られなかった。その原因は、今回の降水応答成分の抽出方法が、当室の歪データの降水応答には
適しているとは言えず、本来の降水応答が正しく反映されたものではなかったためと考えられる。実際、本来
の降水応答と思われる変化までトレンドとして取り去ったり、降水応答以外の変化も降水応答として取り込ま
れたりするなど、問題の多いことがわかった。実際の降水応答は、数日程度の短期的なものから数ヶ月にもわ
たる長期的なものまであり、また、その変化の様相もさまざまであるため、降水応答を正しく抽出することは
非常に難しい作業ではある。今後は、いかにしてより実際の降水応答に近い変化を抽出することができるかが
課題と言える。さらに、NS100及びEW100は短期間の降水応答以上に周期が長く、非線形的な応答が顕著であ
るため、こういった応答にも対応するために、今後は非線形応答も考慮した統計モデルも同時に開発して
いく必要がある。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

〔参考文献〕
1 松本則夫・高橋誠,1993,地震に伴う地下水変化検出のための時系列解析,地震2,45,407-415
2 石垣祐三,1995,埋め込み式体積歪データの精密補正及び異常識別について,験震時報,59,7-29

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

尾形 良彦

統計数理研究所

小山 卓三

気象庁

舘畑 秀衛

気象庁

黄 撫春

Deakin University

古舘 友通

気象庁

松岡 英俊

気象庁