平成292017)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

29−共研−1013

分野分類

統計数理研究所内分野分類

g

主要研究分野分類

1

研究課題名

ネットワークのカスケードモデルについての非線形リカージョン

フリガナ

代表者氏名

イトウ ヨシアキ

伊藤 栄明

ローマ字

Itoh Yoshiaki

所属機関

統計数理研究所

所属部局

名誉教授

職  名

名誉教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

食物連鎖、並列計算のタスク, の長さのcascade model(Joel E Cohen, Charles Newman (1986)) の連続版continuum cascade model (Itoh and Krapivsky(2012))を考える。chain length の最大値の確率分布についての応募者等が導いた非線形recursionの解の漸近的性質を求めることを目的とする。この確率分布は「branching Poisson point processのある初通過問題より得られる」ことを用いて議論する。1次元random packing, binary search tree 等における古典解析学においては様々な成果が蓄積しており, これらをもちいてContinuum cascade modelの確率論の発展をこころみる。

(1) 1次元random packing については多くの解析的研究が行われている (Dutour Sikiric and Itoh (2011)参照)。1次元random packing により生成される隙間の最小値の確率分布をもとめる非線形のrecursionを応募者は見出し(Itoh(1978)),応用確率論の論文 Itoh (1980)としてまとめた。解析はJ M Hammersley の助言によるところが大きく, 確率論に古典的な解析学を応用する面白さを学ぶことができた。(Itoh (1978) のrecursion: f(x+1,h)=1/x Integral [0,x] f(x-y,h)f(y,h) dy)

(2) Binary search treeの線分分割モデルの研究(Sibuya and Itoh (1987))において類似なrecursionを見出した。Binary search tree の高さの極限定理の研究の端緒となった論文Robson (1979)においてこれはすでに導かれていた。Sibuya and Itoh (1987)の研究はbinary search tree の高さの極限定理ついての Devroye (1986) の研究の連続版(continuum binary search tree)である。互いに独立でほぼ同時に行われたものであり、やや弱い形であるがDevroye(1986)と類似な結果を得た。Continuum  binary Search treeはbinary search tree より離散性が少なく,自然な解析ができる
(Robson (1979)のrecursion : f(x+1,n+1)=1/x Integral [0,x] f(x-y,n)f(y,n) dy))

(3)Robson (1979) のrecursion についての Krapivsky and Majumdar (2000)のtravelling wave analysis はFisher-KPP方程式についてのKPP (Kolmogorov, Petrovsky
Piskunov)のアイデアに基づく。直接的にはM. Bramson (1978), K. Uchiyama (1978) のbranching Browianmotionを用いた研究からの類推で,漸近挙動の2項目までをもとめている。のちに M. Drmota (2003),および B. Reed (2003) が数学的証明を与えている。
(4)Solomoninoff (1959)の ランダムにnodeを連結するモデルについてのErdos and Renyi (1960)の研究は有名である。nodeに1から順番に番号をつけた番号の大きい方に向きをつける順序づけたモデルを Cohen and Newman(1986)はcascade model と呼び, 食物連鎖の長さ, を説明するモデルとして考えた。これについてcontinuum binary search tree のアイデアからcontinuum cascade modelを応募者等は考えた。生成されるtreeの高さの確率分布について単純な非線形recursionが得られた。travelling wave analysisのwave front がtreeの高さを漸近的に与えるという考え方により,応募者等は 数理物理学の論文としてまとめた。
(Itoh and Krapivsky (2012)のrecursion: f(x,n+1)=Exp[-x+Integral[0,x]f(y,n)dy] )

(4)Itoh and Krapivsky (2012)の論文について2013年の4月にAmir Dembo (Stanford 大学)が応募者に示した「Continuum cascade model のchain length の最大値の確率分布はbranching Poisson point processの初通過問題より得られる」を適用し漸近挙動を数学的に求めた。本研究はこのrecursion について古典的解析学をもちて漸近的挙動をもとめるのが目的である。

研究成果

本研究課題はFisher-KPP 方程式とならんで確率論と古典解析学の接点にある深い研究課題であり様々な側面を持つ、本年度はBastien Mallein およびSanjay Ramassamyによるinfinite bin model という方向の研究に気づいた。
https://arxiv.org/abs/1610.04043
もとの離散確率モデルについての第一項の定数についての研究であり第二項についてのものではないが本研究との関連で研究している。具体的には
h=1、1leq n,について
F(n,h)=p^0q^{n-1}
1 < hについて
F( n,h)=(q+p frac{1}{n-1}sum_{k=1}^{n-1} F(k,h-1))^{n-1}
なる漸化式の解を求めるという問題が得られこれについて研究を行っている。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Yoshiaki Itoh (2015)Continuum Cascade Model: Branching Random Walk for Traveling Wave
https://arxiv.org/abs/1507.04379

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究会を開催していない。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

Hwang Hsien-kuei

Aademia Sinica

Mathieu Dutour Sikiric

Rudjer Boskovic Institut