平成クオ1989)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

クオ−共研−26

専門分類

3

研究課題名

自己回帰モデルによる小児の生体情報処理活動の発達に関する研究

フリガナ

代表者氏名

オガワ テルユキ

小川 昭之

ローマ字

所属機関

重症心身障害児施設「恵の聖母の家」

所属部局

職  名

園長

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

生体は発達にともなって外的環境の刺激に対応して応答をおこしつつ,あるものは捨て去り,あるものは記憶しながら学習し,内的環境を正常状態に保つべく揺らぎ乍ら成長している。脳波,心拍,血圧,呼吸,姿勢などの揺らぎもまた「生体系」に対して,たえず与えられる多種多様の無数の「刺激」(入力)によっておこされる「応答」(出力)と考えることができる。そこで,新生児出生直後から1歳に至る正常児や異常児の脳波,心拍,血圧,呼吸の応答を情報量規準AICを用いて下記の項目を検討する。


生直後からの未熟児・新生児の生体情報処理活動を解析し,以下の結果をえた。
I.未熟児静睡眠期における心電図RR間隔と血圧間相互応答システムの開発に関する研究
1.未熟児における呼吸と心拍律動間の相互応答の発達特性
受胎後22−28週(I群)と32−33週(II群)の適正体重児それぞれ3例ずつ,計6例の呼吸と心拍律動間のノイズ寄与率を求め,受胎後30週が呼吸・循夜調節中枢の成熟臨界期であることを証明した(自律神経学会誌,印刷中)。
2.未熟児静睡眠期における心電図RR間隔,呼吸変動と血圧間相互応答システムの開発
受胎後31週の適正体重児一例を対象として,RR間隔,収縮期・拡張期血圧,呼吸変動の四者間のノイズ寄与率を求めるシステムを開発し,これらパラメーター間の共通の揺らぎは0.23cycle/beatの周波数にみられ,RR間隔や呼吸変動に対して,収縮期血圧は拡張期血圧よりも強い結合を示すことを定量的に証明した(自律神経学会誌,印刷中)。
II.出生直後より生後1カ月に至る長期モニタリングシステムによる新生児24時間の生体情報処理活動に関する研究
1.胎児心電図RR間隔の計測とその自己回帰システムの開発
受胎後36週の正常発育胎児を対象として,分娩監視装置(MT−810:トーイツ製)を用いて,出力された心拍および心音波形より胎児心電図RR間隔を求め,その時系列に自己回帰・要素波解析を施し,胎児に拍制御の自律神経機能を知るシステムを開発した。(「医用電子と生体工学」誌,投稿中)
2.新生児長期連続脳波のサーカディアンリズムの発達
在胎27−36週の未熟児9例を対象として,生直後から生後6日まで連続して脳波を左右前頭中心双極導出より記録し,サンプリング間隔20msecでAD変換した後,24時間記録データーより4219個のデーターを求め,これに自己回帰解析を施した。その結果,脳波のサーカディアンリズムは出生直後にすでに存在し,胎児期に形成されることが明らかにされた。
III.未熟児・新生児脳波の構成要素波の発達特性に関する研究
昨年度の正常健康未熟児の研究に引続き,仮死産児脳波の定量解析を行い,その発達特性を検討した。その結果,受胎後36〜38週の静睡期において,左右後頭部導出のδ波のパワーが正常範囲群と高値群とに分けられ,後者の群が神経学的に予後不良であることが明らかにされた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1.小川昭之,園田浩富他:未熟児における呼吸と心拍律動の相互応答と,その発達特性(1)静睡眠期,自律神経誌,印刷中
2.小川昭之,園田浩富:未熟児静睡眠期における心電図RR間隔と血圧間相互応答システムの開発,自律神経誌,印刷中
3.小川昭之,園田浩富:胎児心電図RR間隔の計測と,その自己回帰解析システムの開発,「医用電子と生体工学」誌,投稿中
4.OGAWA,T.et al:An application of autoregressive model to pattern discrimination of brain electrical activity mapping.1st International Congress on brain electro magnetic topography,March,31,1990.(大阪)
5.Wakayama,K.,Ogawa,T.:Analysis of gross changes of EEG patterns in very premature infants by long continuous EEG monitoring.In.5th International Congress of Child Neurology.Novemb.5−9,1990.(東京)


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

1.未熟児脳波・心拍・呼吸・血圧など各種生体情報のAICに関する研究(沢口)
2.出生直後より生後1カ月に至る新生児の長期モニタリングによる24時間生体情報活動(脳波,心拍,血圧,呼吸)のAICに関する研究(若山)
3.脳波に対する心拍・血圧・呼吸のインパルス応答に関する研究(園田)
4.AICによるてんかん性異常波出現前の脳波変化に関する研究(小川)


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

石黒 真木夫

統計数理研究所

沢口 博人

大分医科大学大学院

園田 浩富

大分医科大学

若山 幸一

大分医科大学大学院