平成31991)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

3−共研−28

専門分類

4

研究課題名

大量社会調査データの解析法の基礎的研究

フリガナ

代表者氏名

サカモト ヨシユキ

坂元 慶行

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

8 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

今日,長期にわたる継続調査データや,国際比較調査データなど,大規模な社会調査データが一般化しつつある。この研究では,この種のデータに適した解析法を開発するための基礎的な研究を行なう。


社会調査データにはカテゴリカルデータの形式のものが多く、カテゴリカルデータのための解析手法もまた多い。われわれも、実践的な解析手法の開発をめざして、情報量統計学の立場からいくつかの解析法を提案してきた。
情報量統計学とは統計モデルの想定と情報量基準によるその評価という二つの手続きによって現象を解析する統計学である。AICはこのために導入された評価基準の一つであり、最尤モデルの中でのモデル選択によって望ましい結果が得られる場合にはAICは有効である。しかし、このような方法がつねに望ましい結果を与えるとは限らない。たとえば回帰分析で不適切に高次の多項式回帰モデルを用いたとすると、推定値の不安定やパラメトリック・モデルに固有のくせを持ち込むことになり、望ましい結果は得られない。このような場合、推定値が滑らかに変わるという条件の下で尤度を最大化することによってパラメータの推定値を決める方法が有効で、赤池の提案したABIC最小化法に基づく推定法はこのための有力な方法である。こうして、多種多様なモデルが競合することになり、モデルのよさを(推定法によらず)統一的に比較するための情報量規準が必要になる。石黒・坂元はこのための一つの情報量規準としてWICを提案した。
ここでは、2値回帰分析を例としてシミュレーションを行い、WICが、ロジスティック(多項式)回帰モデルやベイズ型モデルなどの、種々のモデルの中からどの程度の確度で真のモデルを検出できるかを調べてみた。その結果、(1)AICも使えるような状況ではWICも同程度以上に働く。(2)想定されたすべてのモデルについて、WICは期待平均対数尤度のよい推定値を与え、モデル選択に関してもほぼ満足できる結果が得られる、等の知見を得た。
なお、このほか、いくつかの問題についてもWICの挙動を調べてみたが、いずれの問題においても良好な結果が得られ、WICが予期以上の実用性をもつとの確信を得た。
また、他の共同研究者の指摘を得ながら、「日本人の国民性調査」のデータを例に、大規模社会調査データのデータ・ベースの作成についても検討した。
さらに、林田・坂元は、フォートラン・プログラムCATDAP−02 のBASIC化を試みたが、公開出来るほどの完成度には至らなかった。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

石黒真木夫、坂元慶行 WIC : An Estimator-Free Information Criterion, Res.Memo.No.410,May 8,1991

坂元慶行 ブートストラップ法によるAICの拡張 数理社会学会 1992年3月23日

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

〈研究内容〉継続調査データや多地域同時調査データの有効な解析法の開発をめざして,統計モデルと評価基準の両面から,基礎的な検討を行なう。また,このタイプのデータ・ベースの例を作成し,手法の有効性の検証に備える。
〈共同研究の必要性〉直井と海野は社会学的な観点から,森と林田は経済学的な観点から,あるべき大量社会調査データの分析システムについて考える。石黒と中村は主として統計解析法について考える。坂元と吉野はこれらの協力を得て,全般的な考察とデータの編集作業を行なう。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

石黒 真木夫

統計数理研究所

海野 道郎

東北大学

直井 優

大阪大学

中村 隆

統計数理研究所

林田 実

北九州大学

森 博美

法政大学

吉野 諒三

統計数理研究所