平成282016)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

28−共研−2033

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

大規模統合化信用リスクデータベースとリスク計量化モデル

フリガナ

代表者氏名

ヤマシタ サトシ

山下 智志

ローマ字

Yamashita Satoshi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

44千円

研究参加者数

7 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

金融リスクには市場リスク、信用リスク、オペレーショナルリスクがあり、銀行をはじめとする金融機関の最も大きなリスク要因は信用リスクである。信用リスクの計量化方法には確率論を元にした構造モデルと、経済均衡を元にした誘導モデル、実績データをもとにした統計モデルが存在する。現在、金融機関のリスク管理では、統計モデルによる信用リスク算出が主流であり、実績データの蓄積と有効な統計モデルの構築が進められている。
本共同研究は、信用リスクに関するデータベース構築の方法論と、統計モデル構築の方法論を構築するものであり、以下の論点を対象とした。

1. 債権回収率の統合データベースの運営管理と信用リスクモデルのシステム実装
従来の信用リスク推計はデフォルト確率の推計に特化したものが一般的である。しかし貸手の損失はデフォルト後にどの程度債権を回収するかに依存する。地方銀行5行の協力を得て、実績回収率データを入手することにより、信用リスク全体の計量化=期待損失推定をおこなった。

2. 大規模信用リスクデータベースのクレンジング技術の開発
中小企業の財務データベースは欠損値や異常値が多く、分析を行うときにはその処理作業が膨大である。それが統計モデルの発展を妨げている。本研究では欠損値異常値の前処理を合理的に行い、財務データ特有のデータベース標準化方法を求めることができた。

3.アパートローン与信リスク計量化モデル
銀行与信の1割をしめるアパートローンについては未だリスク計量化モデルは実用段階にない。本研究ではWebの大規模データと現地調査データの統合によりアパートの収益評価を行い、地方銀行などにリスク量を算出するモデルを提供した。

これらのテーマは相互に関係しており、それぞれで得た知見を有機的に組み合わすことによってさらに高度で実務的に有用なアウトプットを創出する。その成果は、著作、学会、研究集会などの学界にとどまらず、産業界や行政に対して積極的にアピールを行った。
また、高度統合データベースコンソーシアムの会合を年4回行い、データベースの維持管理とモデルの実用化に向けた検討を行っている。また平成26年11月にこれまでの分析結果を基にした報告書を作成した(非公開)。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Tanoue, Y., Kawata, A. and Yamashita, S. (2017) Forecasting loss given default of bank loans with multi-stage model, International Journal of Forecasting, 33, 513-522.
1)山下智志, 岡本基 (2016.9.5) 公的統計ミクロデータ研究コンソーシアムによる高等教育研究支援, 統計関連学会連合大会(一般講演).
2)岡本基, 山下智志 (2016.9.5) 「国際ミクロ統計データベース」の利活用について, 統計関連学会連合大会(一般講演).
3)山下智志 (2016.5.20) 賃貸住宅の空室率要因分析とアパートローンのリスク計量化モデルの開発(1), CRD信用リスク管理セミナー(招待講演).
4)山下智志 (2016.5.25) 賃貸住宅の空室率要因分析とアパートローンのリスク計量化モデルの開発(2), CRD信用リスク管理セミナー(招待講演).
5)山下智志 (2016.8.10) 政府統計データを用いた非集計分析の活用事例, 科研費研究集会:政府統計ミクロデータの構造化と研究利用プラットフォームの形成(招待講演).
6)山下智志 (2016.9.6) リスク科学と目的・データ・統計的方法論, 統計関連学会連合大会(一般講演).
7)山下智志 (2016.11.11) 金融機関データに関する 人工知能と機械学習の これまでとこれから, 日本アクチュアリー会年次大会(招待講演).
8)山下智志 (2016.12.1) A new approach of micro-data analysis through international cooperation, The 8th International Workshop on Analysis of Micro Data of Official Statistics(招待講演).
9)山下智志 (2017.1.25) データ構造化プロジェクトの意義と方向性について, 科研費研究集会:政府統計ミクロデータの構造化と研究利用プラットフォームの形成(招待講演).
10)山下智志 (2017.2.17) 企業の成長要因の構造分析と成長率予測の同時推計, 経済産業省 中小企業等の事業性評価に向けたモデル構築調査事業(招待講演).
11) 渡邊隼史, 一藤裕, 鈴木雅人, 山下智志 (2017.2.8) Webデータとサーベイデータの融合:地方圏における住宅投資リスク評価の実験,社会データ構造化センターシンポジウム(一般講演).
12) 山下智志 (2017.2.7) データ構造化とは何か?, 社会データ構造化センター 年次シンポジウム(招待講演).

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

政府統計ミクロデータの構造化と研究利用プラットフォームの形成シンポジウム、2016.8.10、統計数理研究所、45名
社会データ構造化センター 年次シンポジウム、2017.2.8、総合学術センター、140名

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

安藤 雅和

千葉工業大学

大野 忠士

筑波大学

川崎 能典

統計数理研究所

津田 博史

同志社大学

西山 陽一

早稲田大学

宮本 道子

秋田県立大学