平成51993)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

5−共研−13

専門分類

1

研究課題名

確率解析による確率過程の統計学の研究

フリガナ

代表者氏名

ヨシダ ナカヒロ

吉田 朋広

ローマ字

所属機関

東京大学

所属部局

大学院数理科学研究科

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

確率過程の統計的推測の理論で有力な解析手法となる確率解析とくにMalliavin解析による、高次漸近理論の研究を行う。この研究はまだ始まったばかりで確率論的側面と統計学的側面の両方からの理論的接近をめざす。


確率過程、点過程を含むセミマルチンゲールは近年統計学においても重要性を増してきている。ノンパラメトリック統計における経験分布関数の確率過程としての扱いや、生存時間分析における比例ハザードモデル、マルチプリカティブインテンシティモデルなどの点過程としての扱い等はその典型例であり、その推定関数の不偏性、推定量の一致性、漸近正規性などは、確率積分などの確率解析のテクニックをつかうことによって体型的理解が可能となる。また、拡散過程、地震などのモデルの点過程などはそれ自身確率解析の言葉でモデル化されるものであり、その解析にはその理論を駆使する必要がある。
本研究では確率解析とくに伊藤解析に現れる汎関数の解析手段として、最近盛んに研究されているマリアヴァン解析による統計学の研究を行った。より具体的には、推定関数のマリアヴァンの意味での滑らかさが、対応するM推定量に遺伝することを証明した。このとき、本質的に重要となる概念はバナッハ空間に値を取る汎関数のソボレフ空間を構成することであり、ベーシックな議論が必要になる。この研究によって、M推定量がマリアヴァンの普通の意味で滑らかなことがわかり、従来のよく研究されてきたウイナー汎関数の漸近展開の理論などが直接適用可能となる。さらに、ほかの結果としては、マルチンゲール中心極限定理の精密化(漸近展開)の証明である。独立観測の場合に、クラーメル条件のもとで漸近展開を証明出来るが、マルチンゲールの場合には、マリアヴァン共分散の非退化条件がこの代替となることがわかった。この結果によってエルゴーディックな場合にも高次漸近理論の可能性が出てきた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Malliavin calculus and asymptotic expansion for martingales.ISM,Research Memo.504.

吉田朋広 Banach space valued Wiener functionals and smoothness of M-estimators.科研費シンポジウム,1993年12月.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

確率過程に対する統計手法の開発は、その重要性にも関わらず、未知の部分が多い。とくに、2次以上の漸近有効性の結果はほとんど知られていない。
確率解析とくにMalliavin解析が高次漸近理論に応用できることが最近知られたが、確率論のこの分野の研究者と協力し、さらに理論的な研究を行う。また、この手法は計量経済学への応用もあることがわかったが、このような確率モデルを利用する関連分野への応用を研究する。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

植村 英明

愛知教育大学

尾形 良彦

統計数理研究所

茂野 洋志

     

杉田 洋

九州大学