平成202008)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

20−共研−2026

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

6

研究課題名

日米学生比較

フリガナ

代表者氏名

ウエキ タケシ

植木 武

ローマ字

Takeshi Ueki

所属機関

共立女子短期大学

所属部局

生活科学科

職  名

教授

配分経費

研究費

55千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

家族の絆に関して、日本人研究者の多くは間違った先入観を持っている。つまり、日本のイエ制度の無いアメリカ人は、親子の絆が強くなく、バラバラに住む傾向にあり、従って、年老いた親は老人ホームやアパートでひとり寂しく生活しており、そこで『寂しいアメリカ人』という著名な日本人筆者によって著された本がある。長年にわたり植木は、これは日本人研究者のまったくの誤解で、むしろ、アメリカ人家庭の方が、日本人家族より親子・兄弟の絆は強いと考えていた。2年前、植木は自身が所属する共立女子大学の総合文化研究所より研究費の助成を受け、日米の大学で学生を対象にアンケート調査を計画し、3年間の研究調査を開始した。
2年目の昨年度は、アメリカの4つ(コーネル・ウェブスター・ネブラスカ・ハワイ大学)の大学と、日本の5つ(札幌市立・共立女子・明治・同志社・香蘭女子短大)の大学でアンケートの配布・回収を行った。ところが、データベース作成のための入力費用を、共立の総合文化研究所の申請書に入れ忘れたため、貴統計数理研究所の共同研究に申請させてもらった。アルバイトを雇い、半数ぐらいの入力が済んでいるが、残り半分と、英文自由書きがあるため、校正にかなり時間が掛かると思っている。以下は、各大学で回収された数である。
日本 札幌市立大学 178通 米国 コーネル大学 148通
共立女子大学 157通 ハワイ大学 119通
同志社大学 141通 ネブラスカ大学 280通
香蘭女子短期大学 208通 ウェブスター大学 211通
明治大学 217通
(明治学院大学) (予定)
計 901通 計 758通

アメリカの大学には、この種の調査に認可を下ろす事務部門がある。IRB(Institutional Review Board)と呼ばれるところで、かなり厳格な審査を行っている。4つの大学のIRBと交渉したので、それなりのノウハウを身につけたので、報告しておこう。
IRBの認可を受けるための心得
1.許可を受けるまで、最低3〜4ヵ月を予定すべし。
2.そこの大学の教員で、自分の調査に参加してくれるパートナーをひとり確保すること。そのため、研究論文を共著にするとか、日本へ招聘するとかのメリットを提供する必要がある。
3.そのパートナーに、IRBの要求する条件を教えてもらうこと。
4.条件が4〜6個ぐらいあるので、それらの書類作成を目指すこと。
5.アンケート用紙の表紙に無記名でアカデミック調査であることを強調する文を入れる。名前を書いてもらうと、被験者となるひとりひとりの学生から承諾書が必要となる。
6.同じく表紙に、もし、書き込んだあとで提出したくなければ、しなくとも良いということを明記すること。
大学間に、その厳しさに強弱がある。ネブラスカ州立大学は、数個の書類提出に加え、コンピュータ上でテストを受験しろという条件があった。このテストは一般的に基準化されたもので、法律と人権に関するテストである。不確かな記憶だが、75%(or 70%)以上正解でないとパスできず、落ちたら、再度挑戦となる。私どもは1回でクリアーしたが、かなり難しいものであった。私どもは4時間を少し超えたが、じっくり考えていると充分に5時間はかかるテストであることに注意したい。コーネル大学も、独自の質問に答えるよう要求されたが、ネブラスカ大学に要求されたコンピュータ・テストでパスしたことを述べると、その結果を提供することで、コーネル大学の質問はパスすることができた。恐らく、あのコンピュータ・テストは、ネブラスカ州立大学だけのものではなく、スタンダーライズされたものであり、そこでわれわれは「一般的基準化された」と上述したわけである。ネブラスカ大学では、われわれのアンケートにいじめの問題があったため、これで苦痛を覚えた学生にどのような対応を考えているか、という追加書類の提出を要求してきた。これに対してはパートナーが、キャンパスカウンセラーと話し合い、精神的につらくなった学生はカウンセリングを受けられるという保証をもらい、この問題をクリアーした。
ハワイ州立大学(4年制マノア・キャンパス)は、このコンピュータ・テストを要求しなかったが、その代わり、ひどく厳格な無数の書類の提出を要求してきて、読んでいて頭痛がしてきた。パートナーと相談し、マノア・キャンパスはあきらめ、パートナーが所属しているハワイ州立大学傘下のハワイ大学ホノルル・コミュニティー・カレッジと、小さな私立大学で調査を行った。なお、知人に相談して断られたのだが、カリフォルニア州立大学バークリー校は、やはり、とてつもない厳格なルールがあるそうで、調査をあきらめた経緯があったことを報告しておく。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

今までのところ、発表はない。しかし、今後の予定は以下のごとくである。

2009年7月24日(金) 共立女子大学にて日米シンポジウム開催。
(パネラー: 日本人3名、アメリカ人3名、逐次通訳付き)
2009年 秋 日本社会学会で発表を予定中。
来年以降 日本の邦文誌とアメリカの英文誌に家族の絆といじめの調査結果を投稿する。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

共同研究の吉野教授とは、多数回にわたり指導を受けたが、研究会を開いたことはない。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

吉野 諒三

統計数理研究所