平成172005)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

17−共研−2016

専門分類

2

研究課題名

医療・介護における最適スケジューリングの研究

フリガナ

代表者氏名

イケガミ アツコ

池上 敦子

ローマ字

Ikegami Atsuko

所属機関

成蹊大学

所属部局

理工学部

職  名

助手

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

現在,病院,介護施設においては,トータルなシステム化が進められているが,人間が相手である医療,看護,介護業務は,物を扱う他の業務と基本的に異なることから,そのシステム化が難しいとされている.先行研究においては,看護業務を対象に,看護師不足の問題や看護師の負荷軽減の問題を考慮しながら「看護の質を守るための勤務表作成(ナース・スケジューリング)」の研究をおこなってきた. 本研究では,研究対象の範囲を医療スタッフ(医師,検査技師)や介護スタッフ(ヘルパー等)まで広げることを考えた.
これらの業務では決してその質を落とすことが許されない.しかし,経営面からはスタッフ人数に制限がつけられるのが現状である.それらの下では,スタッフに過度の負荷がかかることがしばしば見受けられる.業務の視点での条件とスタッフの視点での条件はトレードオフの関係にあることから,双方の条件群を満たす勤務スケジュールを作成することは,看護の例をとっても,容易ではない.しかし,問題の構造をうまく把握した数理モデルを構築し,それに基づくアプローチ方法を提案して,効率よくこれらの条件を満たすスケジュールを作成することができれば,医療,看護,介護業務に貢献できるものと考える.
 17年度は,ナース・スケジューリングの研究成果実現を目指すとともに,訪問介護ヘルパー・スケジューリングの数理モデル化のための情報を整理した.具体的な内容を以下に示す.

●ナース・スケジューリングに関しては,コンピュータによる支援システムの構築をおこなった.ナース・スケジューリングで,実際に利用できる勤務表を提供するには,非常に多くのデータ入力(条件入力)が必要である.また,病院毎,部署毎により設定項目も異なることから,汎用的かつ効率のよい,さらに利用者にとって理解しやすい入力ツールが要望されていた.そこで,17年度は,これまでおこなってきた(論文・学会発表してきた)アルゴリズムとインタフェースを実現し,病院現場での利用を試みた.構築した支援システムは,各シフトに関する細かな条件も,各ナースの負荷や希望に関する条件も,すべて,非常に簡単に入力できることから,数理アルゴリズム利用の可能性を大きく広げたと考える.今後もこの支援システムの改善をおこなっていく.

●訪問介護のヘルパー・スケジューリングに関して, 2004年12月に実施した訪問介護支援事業所(東京都の全2380事業所,11月24日現在)に対するアンケート調査の結果の集計と分析をおこなった.訪問介護における勤務表作成においては,利用者のサービスに関する時間制約,ヘルパーの勤務時間に関する時間帯制約,そして両者間の担当制約の他に,移動時間に関する制約,移動ルートの質に関する制約,そして,各ヘルパーの仕事量や仕事の質を考慮すると同時に,利用者から見た場合の訪問ヘルパーのバランスを考慮する必要があることが明らかになってきた.今後は,これらを数理的に扱えるようモデル化を検討していく.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

●論文
・ 池上敦子・緒方洋平・森田隼史・土谷隆: "訪問介護スタッフ・スケジューリング",統計数理研究所共同研究レポート「最適化:モデリングとアルゴリズム 19」, pp.302-216,2006
・ 池上敦子:"ナース・スケジューリング −調査・モデリング・アルゴリズム-",統計数理,Vol.53,No.2 pp.231-259,2005
・ Atsuko Ikegami : "Scheduling doctors for night duty", Modelling Efficiency & Quality in Health Care, pp135-145, 2004.
・ Atsuko Ikegami, Akira Niwa : "A Subproblem-centric Model and Approach to the Nurse Scheduling Problem", Mathematical Programming, Vol.97,No.3,pp.517-541,2003.
等.
● 国際会議
・ Atsuko Ikegami, Yohei Ogata, Shunji Morita, Motohiro Ohkura:"A mathematical model for home help staff scheduling based on questionnaire survey results", 17th International Symposium on Night and Shiftwork, p.73,2005.9
・ Atsuko Ikegami:"A model for home help staff scheduling", The seventeenth triennial conference of the International Federation of Operational Research Societies,p.64,2005.7(invited)
・ Atsuko Ikegami : "A preliminary study on home help staff scheduling", The 30th meeting of the EURO Working Group on Operational Research Applied to Health Services, pp.17-18, 2004.6
・ Atsuko Ikegami : "An algorithm for scheduling doctors for night duty", 18th International Symposium on Mathematical Programming, p.43, 2003.8
・ Atsuko Ikegami : "Scheduling doctors for night duty", The 29th meeting of the EURO Working Group on Operational Research Applied to Health Services, pp.27-28, 2003.7
等.
● シンポジウム・学会発表
・ 池上敦子: "モデリング ?ナース・スケジューリングを中心に?",システム制御情報学会CFA分科会・精密工学会総合生産システム専門委員会,予稿集プログラムIII,pp.1-10,2006
・ 池上敦子,緒方洋平,土谷隆:"訪問介護におけるヘルパースケジューリング",統計数理研究所研究集会「最適化:モデリングとアルゴリズム」,2005.3
・ 池上敦子: "ナース・スケジューリング", RAMPシンポジウム論文集,pp.1-16,2004
・ Atsuko Ikegami : "Scheduling doctors for night duty", Modelling Efficiency & Quality in Health Care, pp135-145, 2004.
・ 雨谷賢一, 池上敦子, 大倉元宏: "医師当直表作成支援システムの開発", 経営情報学会春季全国研究発表大会予稿集,pp.130ー133,2004.6
・ 池上敦子, 宇野綾希, 雨谷賢一, 上原幸恵, 有賀清美, 中川謙夫, 春山順子: "在宅介護ヘルパー・スケジューリングのための基礎的研究", 日本OR学会春季研究発表会アブストラクト集,pp.216ー217,2004.3
● ホームページ
http://cleo.is.seikei.ac.jp/~atsuko/

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研究参加者一覧

氏名

所属機関

土谷 隆

統計数理研究所