平成242012)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

24−共研−9

分野分類

統計数理研究所内分野分類

f

主要研究分野分類

1

研究課題名

確率微分方程式を用いた時系列パラメータ推定方法と計算アルゴリズム

フリガナ

代表者氏名

サトウ アキヒロ

佐藤 彰洋

ローマ字

Aki-Hiro Sato

所属機関

京都大学

所属部局

大学院情報学研究科

職  名

助教

 

 

研究目的と成果の概要

確率微分方程式のひとつとして、Type IV Pearson diffusion processを取り上げ、この確率微分方程式の5つのパラメータを推定するための方法と、効率的に時系列を生成する方法について研究を行なう。前年度の研究から、2種類のパラメータ推定方法間でのパラメータ推定結果の比較を行い、モンテカルロシミュレーションから、パラメータ推定値の安定性の比較を行った。その結果、Type IV Pearson diffusion processにおいて局所線形化法を用いた場合、パラメータ推定値の不安定性が存在することを定性的に確認した。本年度は、この研究を更にすすめ、Type IV Pearson diffusion processのパラメータ推定方法として、局所線形化法とFokker-Planck方程式を用いた遷移確率密度関数の直接計算との間でのパラメータ推定精度の定量的比較を行う。この比較研究を用いるためには、大量の計算資源が必要となるため、統計数理研究所スーパーコンピュータシステムを用いパラメータ推定をモンテカルロ的に行う。そして、両方法のパラメータ推定値の精度とパラメータ推定値との比較を行い、局所線形化法でなぜパラメータ推定値の不安定性が生じるかの原因を調べる。更に、局所線形化法においてパラメータ推定値の不安定性が発生しないようにする方法について研究を行いたい。

Type IV Pearson diffusion processにおいて局所線形化法を用いパラメータ推定を行った場合、尤度関数に対して多峰性の問題が顕著となることをつきとめた。そのため、尤度を最大化するという最尤法の操作においてパラメータ推定を行うための初期値に依存して最大となる値が異なるという問題が存在していることを確認した。局所線形化法をType IV Pearson diffusion processのパラメータ推定法として採用したときにおこる、パラメータ推定値の不安定性の原因はこの多峰性に起因するものであった。このことを避ける方法について検討を重ねたが、本質的に問題を解決する方法には至らなかった。5つのパラメータ全てに対してグリッドサーチを行い最大値を見出す方法の検討を行ったが、計算量の問題から本質的な解決法とはなりにくい。Fokker-Planck方程式を用いた方法の場合、局所線形化法で見られる尤度の多峰性の問題は顕著ではないため、Type IV Pearson diffusion processのパラメータ推定方法としてFokker-Planck方程式を数値的に解き、数値的に遷移確率を計算する方法について更に計算方法を深めていくことが有効であるとの結論にたどりついた。