平成91997)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

9−共研−62

専門分類

7

研究課題名

テストデイモデルを用いた乳牛の体細胞数の遺伝的能力評価の検討

フリガナ

代表者氏名

ワダ ヤスヒコ

和田 康彦

ローマ字

所属機関

農林水産省畜産試験場

所属部局

育種部

職  名

主任研究官

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

搾乳牛において乳房炎を罹患すると生乳が出荷できなくなるために経済的に重要な問題である。今まで乳房炎については複雑な環境要因がからむことから、乳房炎抵抗性のある乳牛を育種改良する試みは成功していない。そこで、泌乳期間すべてのデータをアニマルモデルとして扱うテストデイモデルを用いて、乳房炎の指標とされている体細胞数の遺伝的能力評価の可能性について検討する。


わが国の牛群検定で収集された28,626,702件の体細胞数データから、農家コードをもとにランダムに1/100の農家を選んでデータセットを3セット作成し、アニマルモデルREML法で分散成分を推定し、遺伝率などを算出した。
使用したデータセットはそれぞれ158,323件、158,970件、166,299件のデータセットで、使用したモデルは変量効果として、個体の効果、永続的環境効果、牛群・年次・産次の効果を、母数効果として、地域ブロック・季節と、テストデイモデルとしての4つの偏回帰係数を取り上げた。
その結果、遺伝率の推定値はそれぞれ、0.0049、0.0017、0.0048と非常に小さな値であった。このためテストデイモデルによる体細胞数の種畜能力評価は不可能であると結論づけられた。
また永続的環境効果の分散比率はそれぞれ、0.1184、0.1303、0.1337であり、永続的環境効果以外の非相加的遺伝効果が交絡している可能性が疑われた。牛群・年次・産次の効果の分散比率はそれぞれ、0.1454、0.1061、0.1416であった。
Random regressionモデルを用いればもう少し遺伝率の高い係数が見つかる可能性もあるが、乳房炎抵抗性の指標である体細胞数の改良には、遺伝能力評価を用いるのではなくて、より遺伝学的な手法を用いるべきであろうと考察された。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

乳量や乳脂量などの泌乳形質と体細胞数を泌乳期間中に毎月測定したデータを用いて、アニマルモデルREML法による遺伝的パラメータの推定を行う。それらをもとにアニマルモデルBLUP法による体細胞数の遺伝的能力評価を試行する。モデルとしては当初、カナダやドイツで用いられているシンプルなテストデイモデルを用いるが、それ以外のモデルについても順次、検討していく。申請者らは昭和63年度から平成4年度までBLUP法を用いた遺伝的能力手法についての統計数理研究所との共同研究として実施してきた。そのなかで統計数理研究所で開発されたAICを用いたモデル選択手法を世界ではじめて遺伝的能力評価モデルに適用し、大きな成果をあげてきた。今回、テストデイモデルによる遺伝的能力評価を実施するにあたり、引き続き統計数理研究所との共同研究を実施することにより、わが国における乳牛の育種改良と世界的な遺伝的能力評価の研究に対して、積極的な貢献ができるものと期待される。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

柏木 宣久

統計数理研究所