平成242012)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

24−共研−2093

分野分類

統計数理研究所内分野分類

j

主要研究分野分類

5

研究課題名

自然撹乱現象に関する流体工学的計量を用いたリスク評価手法の研究

フリガナ

代表者氏名

ヨシモト アツシ

吉本 敦

ローマ字

Yoshimoto Atsushi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

数理・推論研究系

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

自然撹乱現象に関する流体工学的計量を用いたリスク評価手法の研究

近年,地球環境および急速な社会経済状況の変化に伴う自然攪乱(台風,山火事,津波等)の規模・頻度の拡大に対する懸念が高まっており,これら自然攪乱による被害リスクの効果的な軽減対策は早急に検討されるべき課題である.例えば,東日本大震災では,津波の被害により,改めて海岸林管理のあり方が注目されることとなった.海岸林の主な役割は津波が林地を通過する際に徐々にエネルギーを吸収し,居住地区への到達を遅らせるバリアとしての役割がある.東日本大震災においても海岸林があった地域となかった地域で津波が内陸部に押し寄せる時間を比べると,海岸への津波到着後6分間で200m程度の差がついたということが報告されている.こうした中で,海岸林の防災林としての造成,維持・管理は重要かつ急務であり,津波に対する抵抗力を高める樹種の組み合わせや構造を明らかにすることが必要である.
津波に対する抵抗力は,樹種により異なることが知られており,特に樹種の形状構造が抵抗力の大きさに影響を及ぼすことが様々なフィールド調査やシミュレーションモデリングにより報告されている.また,冠雪害でも,樹木の形状により被害リスクに違いがあることが知られており,これら自然攪乱によるリスクの軽減については,樹木の形状構造の違いを評価することが重要であると考えられる.そこで本研究では,最適化のフレームワークを用いて単林木の形状を詳細に再現可能な3次元可視化モデルの構築を行った.具体的には,調査フィールドに3次元位置測定装置による運動解析システムを導入し,付属のポインターにより一定の間隔で樹木の形状の3次元座標データを獲得し,最適化モデルにより,ポイントの位置関係からこれらを繋ぐ樹木の表面の形状を再現した.フィールドでの三次元データの収集では,樹木の周囲を一定の高さごとポインターでなぞりながら,3次元座標上のデータを習得していくため,1本の樹木に対して,樹木の周囲を囲むポイントが何層も出来ることになる.各層におけるポイントの数は,データを取得する高さ(つまり何番目の層か)により樹木の直径が異なるため,一定ではない.これら異なる層に所属するポイントを繋いでいくことで,樹木の表面が再現される.本研究では,これらのポイントを繋ぐ三角形をいくつも生成し,これら三角形の集まりにより再現される表面の面積が最小になるような三角形の組み合わせを探索した.このような最適化モデルの導入により,樹木の形状の再現がより効果的・効率的に行えるようになり,樹木形状による災害に対する耐久性と言ったリスクシミュレーションが可能となった.
樹木の詳細な3次元データの収集および,それをもとにした形状構造の再現は,近年,3次元データ収集装置とコンピュータ性能の急速な発達により,注目されつつある手法である.今回の研究により最適化モデルを応用することで,詳細な3次元データをもとに,より実物に近く詳細な形状の再現が可能となることが分かった.今後は,このようなデータを様々な自然環境下で生育する樹木について収集し,形状を再現し,その過程で習得される定量的なデータをもとに,リスク軽減機能に寄与する樹木の形状構造を明らかにすることが必要である.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

特になし

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

特になし

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

赤石 亮

なし

石川 仁

東京理科大学

木島 真志

琉球大学