平成282016)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

28−共研−2039

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

3

研究課題名

疾患の遺伝リスク要因解明のための大規模多重検定の方法論

フリガナ

代表者氏名

ノマ ヒサシ

野間 久史

ローマ字

Noma Hisashi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

106千円

研究参加者数

6 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

近年の分子遺伝学・生物学の科学技術の飛躍的な発展によって、大規模なヒトの遺伝的情報の測定が可能となり、疾患の遺伝的リスクの解明に向けての研究が世界的に推進されている。これまでにも、数々の大規模データをもとにした遺伝疫学研究によって、多くの疾患関連変異が明らかにされてきているが、実際には、ほとんどの疾患において、既知のリスク遺伝子の影響度を総計しても、疾患発症の遺伝的リスクを十分に説明するには至っていない。すなわち、まだ多数の重要な遺伝的リスク要因が埋もれていることが示唆されている。これらの遺伝的疾患リスク要因の解明は、疾患の生物学的機序の解明や、新規治療法の開発につながる可能性があり、医学・生物学において、大きな関心が集められている。
これらの遺伝疫学上の未解決問題には、一般的な疫学研究と同じく、さまざまなバイアスや疫学的・生物学的問題が関わっていることが考慮され、その解決は容易ではないが、数百万以上のオーダーの次元となる大規模データを扱う上での統計学的な問題も、ひとつの重大な要因となっていると考えられている。特に、遺伝要因と疾患の関連を評価する上で最も広く使用されている多重検定の方法論は、重要な遺伝リスク要因の探索において中心的な役割を果たしており、近年のNature系列誌でも、その方法論に関する議論が行われている。しかしながら、実践では、第一種の過誤確率を厳しく制御する、Bonferroniの方法による単純なFamilywise Error Rateの制御方法が未だスタンダードな方法として用いられており、その保守性を緩和するための方法を含め、最新の効率的な方法論・ストラテジーはほとんど採用されていない。
本研究では、上記のような遺伝疫学における現状の問題を解決するための多重検定の方法論・ストラテジーについての研究を行った。本研究では、新規な方法論の開発だけではなく、既存の手法の実践的有用性の詳細な比較・評価なども行い、当該領域における現状の解析手法の問題点を明確に示し、効率的なストラテジーについての検討を行った。また、過去の実例をもとにした大規模シミュレーション実験などを実施し、現実的な設定のもとで、現状のスタンダードな方法を用いることによる損失(相応に多大なものになる)と、新たな効率的なストラテジーを用いる効用についての定量的な評価を行った。得られた成果は、研究論文としてまとめ、現在、統計遺伝学の国際ジャーナルへ投稿中である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Otani, T., Noma, H., Nishino, J., Matsui, S. (2017). Re-assessment of multiple testing strategies for more efficient genome-wide association studies, ISM Research Memorandum 1202.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

特になし。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

植木 優夫

久留米大学

西野 穣

名古屋大学大学院医学系研究科

松井 孝太

名古屋大学

松井 茂之

名古屋大学

矢原 耕史

久留米大学