平成252013)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

25−共研−1022

分野分類

統計数理研究所内分野分類

g

主要研究分野分類

1

研究課題名

単純化した多次元ランダムパッキングにおける漸化式

フリガナ

代表者氏名

イトウ ヨシアキ

伊藤 栄明

ローマ字

Itoh Yoshiaki

所属機関

統計数理研究所

所属部局

名誉教授

職  名

名誉教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

最密充填の問題は数学における基本的な課題のひとつであり、幾何学的な興味だけでなく、符号理論、結晶群の理論などへ応用がある。それを確率化したものとしてランダムパッキングという問題がある。ランダムパッキングは自然科学、工学などにおける応用があり実験的研究、計算機シミュレーションによる研究、数学的研究、等多くの研究がある(Evans (1993)参照).
1次元のランダムパッキングは路上駐車の問題ともいわれている。これを拡張した、向きをそろえた多次元のcubeの多次元cubeへのランダムパッキングにおける充填率の期待値は解析的に得ることはできないと考えられている有名な問題である。
A. Renyi (1958) は1次元の充填率をrecursionをもちいて解析的にもとめた。向きをそろえて辺の長さ1のcubeを辺の長さxのcubeにランダムに詰めてゆくとき充填率はどのようになるか。 x を十分大とするd 次元cubeの場合の充填率の極限が、(i)存在し、(ii)1次元の充填率のd乗になる、というPalastiの予想が1960年代から議論されている。多くの研究者が、興味をもち証明をこころみた。充填率の極限の存在 (i)のみが知られ(Penrose (2002))、充填率の値についての解析的結果はないように思う。計算機シミュレーションの結果より(ii)はなりたたないと考えられている。
多次元のランダムパッキングの本質を失わずに、可能なかぎり単純化し高い次元での充填率を考える(伊藤栄明、上田澄江 (1983)、Itoh and Solomon (1986)、Dutour Sikiric and Itoh)。この問題のシミュレーションよりPalastiの予想にかわる自然な予想としてべき乗則に導かれるが、証明は不可能に近いと考えられる。申請者の共同研究者であるSteklov研究所所員Moscow大学教授Nikolai Dolbilinの学生であった Alexei Poyarkov(2007)は申請者等の単純化されたランダムパッキングに興味をもち、充填率のlower boundを求めた。Poyarkovの方法は天才的であり、ランダムパッキングの過程により可能なスペースがへってゆく過程を高次元cubeが退化してゆく過程としてとらえ、多次元ランダムパッキングの充填率への解析的接近への道をひらいた。
2進探索木の連続モデルとして申請者は確率逐次2分割(Sibuya and Itoh,(1987))について考えてきたがこの問題に関連した1次元片側ランダムパッキングを考えた(Itoh and Mahmoud (2003))。この問題を多次元にし、cubeの単純化した離散片隅志向ランダムパッキングを考える。この問題には、漸化式 が存在することに最近気付いた。本研究ではこれをもちいて充填率の期待値を解析的にもとめ漸近的挙動をしらべる。さらに片隅志向の程度を弱めてゆき, 通常の多次元確率逐次充填の問題についての解析的議論の基礎としての研究を発展させる。漸化式をもちいる方法は通常の多次元の場合不可能であると考えられてきたが、単純化した問題を考えれば可能である場合があり、本研究はこの方向での研究を進め充填率の空間次元について明らかにする。多次元ランダムパッキングの解析的研究は非常に困難であることが知られているが、極端に単純化された様々な確率モデルについて解析的に研究することにより、もとの多次元ランダムパッキングの解析的研究の糸口をつかもうとするものである。
本年度は空間次元との関連で漸近的な挙動を解析的に得ることができ結果を論文にまとめることができた。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Fuchs, M., Hwang,HK., Itoh, Y., Mahmoud, H.: A binomial splitting process in connection with corner parking problems, Journal of Applied Probability (to appear)
http://arxiv.org/abs/1307.5610

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

中野 純司

統計数理研究所

Hwang Hsien-Kuei

Academia Sinica, Taiwan