平成192007)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

19−共研−2014

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

4

研究課題名

GPSデータを用いた電離圏・プラズマ圏電子密度トモグラフィー(4)

フリガナ

代表者氏名

ウエノ ゲンタ

上野 玄太

ローマ字

Genta Ueno

所属機関

統計数理研究所

所属部局

モデリング研究系

職  名

助教

配分経費

研究費

40千円

旅 費

150千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 GPS受信機の2周波電波の観測データから得られる視線方向の電子数積分値を用いて、高度100kmから20,000kmまでの電離圏・プラズマ圏の電子密度3次元分布の推定を行う事を目的としている。
 衛星を用いた測位システムであるGPSは2周波の電波を使用しており、その2周波電波の地球電離大気による遅延時間の差を用いて、電波の伝搬経路上の電子密度の総数を測定する事が出来る。そのような経路上の電子密度の積分値をTEC(Total Electron Content)と呼ぶが、近年のGPS受信機網の急速な発展により、大量のTECデータが得られている。特に日本には世界に類を見ない高密度のGPS受信機網(GEONET)が国土地理院によって展開され、そのデータからのTECの算出が京都大学によって進められている。これらのデータは積分値であるため、GPS軌道高度の20,000kmから地上までの経路上のどの領域がTECに寄与しているかを推定するにはトモグラフィーによる3次元電子密度分布の推定を行う必要がある。このような電子密度分布の推定によって、観測データが非常に限られている超高層域の物理現象の解明に寄与できる。
 平成19年度には処理の高速化などを進めた。用いるデータは従来、2日遅れで国土地理院によって公開される最終版の国土地理院電子基準点データを用いていたが、これを3時間毎に公開される速報データを用いるようにシステムを変更した。このとき、GPS衛星の軌道情報なども最終版ではなく予測値データを用いることで誤差が生じるが、推定アルゴリズムに大きな影響を及ぼさないことを確認した。速報値におけるデータの重複などはデータの前処理において除去するようにした。この結果、観測後、最短3時間、最長6時間遅れで、トモグラフィの算出が開始できるようになり、準リアルタイムの算出が可能となるシステムとなった。このようなトモグラフィ手法を用いて地磁気擾乱時における日本上空の電子密度3次元構造の解析を進めた。平成19年度は大きな地磁気擾乱は太陽活動度が低かったため発生しなかったが過去のデータを用いて、地磁気擾乱時に従来考えられていた物より大きな電子密度勾配が生じていることが確認された。
 平成20年度には、平成19年度には大きな進展が達成出来なかったアルゴリズムの最適化と、衛星観測データとの比較、東南アジア域、米国、欧州など他の地域への応用を進める予定である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

第112回地球電磁気・地球惑星圏学会 2007年9月28日-10月1日 名古屋
「GPS受信機網データを用いた電離圏トモグラフィによる電離圏擾乱構造の観測」
齊藤昭則, 藤田 信幸, 上野玄太, 西岡未知


American Geophysical Union 2007 Fall Meeting 2007年12月10日-14日 サンフランシスコ
「GPS Ionospheric Tomography over Japan with Constrained Least-squares Method」
A. Saito, S. Teraishi, G. Ueno, N. Fujita, and T. Tsugawa


研究集会:電離圏・磁気圏のリモートセンシングデータとモデルの結合 2008年1月18日 東京                               
「GPS全電子数データを用いた電離圏トモグラフィ」
齊藤昭則, 藤田 信幸, 上野玄太


Saito, A., S. Fukao, and S. Miyazaki, High resolution mapping of TEC perturbations with the GSI GPS network over Japan, Geophys. Res. Let., 25, 3079-3082, 1998.

Saito, A., M. Nishimura, M. Yamamoto, S. Fukao, T. Tsugawa, Y. Otsuka, S. Miyazaki, and M. C. Kelley, Observations of traveling ionospheric disturbances and 3-m scale irregularities in the nighttime F-region ionosphere with the MU radar and a GPS network, Earth Planets and Space, 54, 45-56, 2002.

GPS全電子数データベース:http://stegps.kugi.kyoto-u.ac.jp

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

該当なし

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

齊藤 昭則

京都大学

Choosakul , Nithiwatthn

京都大学

藤田 信幸

京都大学