昭和631988)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

63−共研−101

専門分類

9

研究課題名

大気汚染に関する調査,研究

フリガナ

代表者氏名

ノダ カズオ

野田 一雄

ローマ字

所属機関

明星大学

所属部局

理工学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

12 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

大気汚染問題では,汚染濃度データを統計的・物理的観点から解析すると同時に,大気汚染によって生じる疫学的あるいは社会学的問題を分析すること,つまり物的・人的の両面から問題を同時に取り扱っていくことが大切である。本研究では,大気汚染に係わる様々な問題の内から,予測モデルの構築と沿道住民の意識を取り上げ,相互の関連を考慮しつつ,これらについて調査・研究を行う。


人間社会に与える大気汚染の影響,とりわけ道路沿いの住民への影響は,汚染状況の物理化学的測定,実際の暮らしの中での実感の把握,そして物理的汚染の健康への影響評価の3つの側面から調べられた結果をふまえて,総合的に調べる必要がある。
このうち第3の点を除く3点について解析をした。まず第1点に関しては,全国に常時測定局が張り巡らされており,東京都に限っても,38地点から毎時観測データが磁気的に蓄積されている。筆者は,昭和55年度に東京都で行なわれた交差点等周辺NOx分布状況精密調査結果のうち滝野川地区(高速5号線沿道)のデータに基づいて,道路からの距離とともに濃度が減衰していく様子や日変動のパターンを分散分析の手法で調べた。
また,回帰分析により交通量,風速から沿道NOx濃度を推定する関係式を求めた。バックグラウンドが無いときは濃度は風速に逆比例するが,回帰でみても,風速の因子は重要であることがわかる。この回帰式を別の性格の似た地点(国立−甲州街道沿い)に適用してみたところ1つの地点で得られた回帰式が普遍性を持って他の地点に利用できる可能性があることを見た。
次に,第2点であるが,上と同じ高速5号線沿道において環境アンケートが実施されたため,これを解析した。質問は,まず周囲の環境で悪いと思われるものを聞き,それからそれらが具体的にどの様な形で被害を受けているかを問う形でなされている。さらに,自動車の影響などを測るのが目的なので,その他の背景要因として年齢の他に建物の構造,道路から何軒目であるか,何階に住んでいるかなどをフェイスシートに盛り込んでいる。
この調査では,アンケートを配布した家がすべて地図上に書き込まれていたため,まず,この地図情報をパソコンに入力し,回答者の分布状況を調べた。その結果,アンケートを配布した家に対して,回答があった家と無かった家の分布の間で,大きな差はみられなかった。
フェイスシートに数量化III類をかけてみると,道路に面しているところは鉄筋コンクリートの建物が多く,奥まるに連れ,木造モルタル,木造となってくることがわかる。中年以降は木造建築に住む割合が多いのに対して,若い世代は鉄筋コンクリートの建物に住む傾向があることがよく読み取れる。
悪いと感じている環境について回答のパターンを見てみると,騒音,振動,排気ガス,及びほこりに対して,同時に不満を持っている人が多いことがわかった。これに対して,日当り,風通し,ゴミ集めは性格を異にする。騒音,排気ガス,悪臭,ほこりといった項目には,道路に面している人々が反応し,振動や日当り,風通し,電波障害などは道路から2軒目以降の木造モルタルあるいは木造家屋の人が多く反応している。
騒音,振動について,被害を受けている状況を問うた質問をIII類で調べたみた。どちらに対しても大まかにいって同じような症状を訴えているが,気分がイライラするという症状との関連でみてみると,いくらか原因に違いがあるようである。騒音では,取り立てて特別強い原因はあげられないが,寝つけないことがあったり,道路側の窓を十分に開けられないといったことがイライラの原因になるようである。これに対して,振動では,考え事,読書,勉強の邪魔になるというのが,はっきりとした原因としてあげられる。
現在,アンケートの結果を順序のあるカテゴリカルデータとして解析を続けている。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

本年度は,次の2点について,重点的に研究を行う。
1.東京都環境科学研究所から提供されたデータをもとに,濃度分布の局所的な予測モデルならびに大域的な予測モデルの開発を行う。
2.沿道に居住する住民の意識調査の結果を解析し「体感環境」と計測値との関係を探る。また,実施が予定されている東京都環境科学研究所による住民意識調査との連携を計る。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

伊藤 洋昭

東京都環境科学研究所

伊藤 政志

東京都環境科学研究所

柏木 宣久

統計数理研究所

岸野 洋久

東京大学

重光 和之

広島県環境センター

清水 邦夫

東京理科大学

田村 義保

統計数理研究所

中村 晃

北海道大学

廣崎 昭太

国立環境研究所

松本 幸雄

国立環境研究所

宮岡 悦良

東京理科大学