平成272015)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

27−共研−22

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

数理心理学のベイズモデル

フリガナ

代表者氏名

オカダ ケンスケ

岡田 謙介

ローマ字

Okada Kensuke

所属機関

専修大学

所属部局

人間科学部

職  名

准教授

 

 

研究目的と成果の概要

基礎心理学においては,得られたデータを分散分析によって統計分析することが伝統的に多く行われてきた。その主要な動機は,条件間の差,もしくは複数の要因が組み合わさった交互作用を見出すことであった。しかし,こうしたアプローチはデータの生成メカニズムを直接考慮できていない。たとえば刺激間の評定類似度や,複数刺激から1つを選択する意思決定といったデータが観測される場面を鑑みるに,そのデータが得られた認知的・心理学的メカニズムを数理モデルによって表現し,そのモデルの統計的推定と評価を行うことができれば,同じデータから従来よりももっと豊かな情報を得ることができ,そして行動の予測にも役立つと考えられる。

そこで本研究課題では,実際に心理学データの得られるメカニズムをとりいれた数理モデルを構築し,ベイズ推定によって不確実性を考慮しつつ推定や予測を行うための統計モデリング法の開発と,モンテカルロ実験による推定・予測精度やモデル選択の評価を行うことを考えた。この数理モデルは,個人差を表現するためのランダム効果や階層構造,潜在クラス構造などを有する,複雑な統計モデルとなる。そのよさの評価はモンテカルロ実験によって行うが,これには安定した計算機資源が必要となる。そこで,統計数理研究所の共同クラウド計算システムを利用させていただき,よりよい現実のモデリングのための統計モデル開発と評価を進めることが,本共同利用申請の目的であった。

しかし,申請者は平成27年度在外研究のため,1年間米国カリフォルニア大学に滞在することとなった。そのため,海外から統計科学計算機システムにアクセスする必要が生じたが,研究所の安全保障輸出管理上,利用を計画していたスーパーコンピュータを海外から利用することがかなわなかった。このため,平成27年度は,残念ながら研究課題を実際に進めていくことができなかった。

そこで,平成28年度に改めて,同じ研究課題で共同利用申請を行い,再び採択していただいた。平成28年度は国内の本務校に戻っており,上記の問題は生じない。1年越しとなってしまったが,改めて,平成28年度に研究課題を鋭意遂行していく所存である。