平成81996)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

8−共研−79

専門分類

7

研究課題名

ヒトの発育の時系列解析

フリガナ

代表者氏名

コバヤシ マサコ

小林 正子

ローマ字

所属機関

国立公衆衛生院

所属部局

母子保健学部

職  名

室長

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

発育は時間と共に変化する現象であるから、その解析には時系列解析が必要である。しかし日本でも世界でもそのような研究は少ない。そこで本研究は時系列解析プログラムセンサス局法X-11、BAYSEA、DECOMPによってヒトの発育を解析してきた。そして、これらは何れも発育に現れる波動の解析に有効であることが分かった。1日2回測定の対象も4人に増えたので、今後もAR過程の波動を分離できるDECOMPによる解析を継続したい。


時間と共に変化する現象は時系列解析で解明されなくてはならない、という信念のもと、ヒトの発育を非定常時系列解析プログラムDECOMPによって解析した。
解析対象は、同胞5人の20年余に亘る身長・体重の月次測定データ、および姉妹2組の3〜5年継続した起床後と就寝前の1日2回計測データである。今回の解析では特にAR(自己回帰)過程に注目して検討を行った。
【結果と考察】発育は滑らかに進行するということが従来の定説となっているが、CENSUS局方やBAYSEAで発育データを解析すると、定説に反して多くの波動が現れた。
しかしその波動は、DECOMPによってAR過程を分離すると消える。AICを参照しつつARの次数を変えていくと、身長・体重とも次数1,2または3のときAICは最小となった。 さらに、現段階ではARについて次のような点が注目される。
1. ARの次数は成長段階と関連を持ち、発育が旺盛なときほどARの次数は高く、老化によって次第に次数が低くなる傾向が見られる。このことは、身体制御が静的なものでなく動的なものであることを示唆しているのかどうか、ということが今後の検討課題である。
2. 子どもの体重のAR成分中に周期性が見られたが、これの意味するところは何か。
AR成分には、まだ多くの未知の情報が含まれていると思われる。現在、生体リズムやゆらぎについての研究が盛んに行われているが、本研究からもそのような観点に迫るところまで考えが及んだ。身長・体重という身近かな量の計測でも、時系列解析を行うことで様々な情報が得られることが明らかになったといえる。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

東郷正美 「時系列解析による身長の発育と老化の比較」 AUXOLOGY Vol.3: 35-37, 1996, 9.

小林正子,東郷正美 「発育の波動に見られるAR(自己回帰過程)について」第7回AUXOLOGY研究会,1996, 11. 9, 東京.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

1)昨年に引き続き、1971年から測定した5人の同胞の身長・体重の月次データに加えて、その他の発育変数についても、DECOMPを用いて解析する。2)発育期から成人へ移行する過程で波動の形も変化している。AR過程や季節変動成分の変化を捉え、移行期の姿を把握すると共に、AR過程が示す波動の生物学的意味を理解する。3)小児4人を対象に1日2回の測定が行われている。これらの記録をDECOMPで解析して発育に関する新しい知見を得る。以上はいずれも貴研究所の時系列解析の専門家との共同研究によってはじめて実りあるものになると期待される。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

岩城 淳子

東京大学大学院

北川 源四郎

統計数理研究所

東郷 正美

神戸大学