平成41992)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

4−共研−83

専門分類

7

研究課題名

腫瘍を含む組織形成の幾何学モデル

フリガナ

代表者氏名

タネムラ マサハル

種村 正美

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

組織を形成している細胞の間に注目しつつ組織の幾何学モデルをつくる。細胞間は基底面側か、自由表面か、細胞間には間隙があるのかないのか、間隙は拡大するのか縮小するのかを考えることにより、これまでにない組織形成の幾何学モデルをつくり、実在の組織と比較する。


標記の研究課題に関連して、まず、細胞間の隙間の構造を考慮に入れた生物組織の幾何学モデルを改良し、生物物理学会で発表した。続いて、腫瘍の一種で、病巣が表皮層を水平方向に移動・分裂・転移するPaget病に関して、病巣の細胞の空間分布のモデルを考察するために、皮疹辺縁からの細胞の距離・表皮内での深度・各nestの大きさのデータを採取し、分布の様式として皮疹辺縁からの距離の関数とする正規型及び指数型の2つのモデルを当てはめた。
データとモデルとの食い違いの評価には、データが区画法データであることから、尤度比統計量を用いた。解析の結果、全般的に正規型の方が指数型より当てはまりが良く、また、表皮の水平方向の方が深度方向に比較して浸潤の度合いが大きいこともパラメータ推定の結果明確になった。また、パラメータの推定値が全体的に安定していることから、Paget病細胞の浸潤様式に一定の法則性が見られることが、われわれの研究で初めて明らかになった。この成果は日本皮膚科学会西部支部学術大会で発表した。
さらに、生物のシート構造としての表皮・真皮に見られる階層性および腸の構造に見られる階層性に関してフラクタル解析を行い、それぞれフラクタル次元として2.4を得た。これらを染色体のフラクタル構造の解析結果(フラクタル次元2.2)と併せてみると、互いに類似の値になり、非常に興味深い結果が得られた。この成果は、上述の学術大会に発表した。
さらに、表皮細胞の3次元的な積層構造に関して真皮側では比較的不規則な配列が見られるのに対して、表皮側に行くに従って次第に規則的な配列になることがしばしば観察される。この現象に対して、われわれは幾何学モデルを提案し、形の科学シンポジウムで発表し、現在も改良を重ねている。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

本多久夫、種村正美、今山修平「細胞間の隙間を考えた組織の幾何学モデル(2)」、日本生物物理学会年会,H4.11.5;
本多久夫、種村正美、今山修平「表皮組織の秩序形成」、形の科学会シンポジウム,H4.11.26;清水信之、今山修平、堀
嘉昭、種村正美、本多久夫「外陰部Paget病細胞の表皮内浸潤の様式」皮膚科学会西部支部学術大会、H4.11.19;他

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

今山による具体的な組織についてのデータおよび情報と、種村による2次元および3次元での多面体モデルを使い、種村および本多が電算機シミュレーションの作業を行う。
年2回の打ち合わせ会議および年1回の九州大学医学部における実地調査と年2回1週間程度の電算機使用のための東京滞在を予定している。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

今山 修平

九州大学

本多 久夫

兵庫大学