平成101998)年度 共同研究B実施報告書

 

課題番号

10−共研−16

専門分類

7

研究課題名

真核細胞におけるリボソーム蛋白種の多様化と進化

フリガナ

代表者氏名

ワダ アキラ

和田 明

ローマ字

所属機関

大阪医科大学

所属部局

医学部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

7 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

真核生物の進化の比較的早い時期に分岐したと考えられる原生生物群であるDiplomonads類やMicrosporidia類に関するリボソーム蛋白種の蛋白解析を行う。その結果得られたデータを統計学的・分子進化学的手法を用いて解析し、真核細胞におけるリボソーム蛋白種の多様化と進化の過程を解明する。


本研究は、本年度から開始されたものであり、その目的は、「真核生物の進化の比較的早い時期に分岐したと考えられる原生生物群に関するリボソーム蛋白種の生化学的解析を行い、その結果得られたデータを、統計学的・分子進化学的手法を用いて解析することにより、真核細胞におけるリボソーム蛋白種の多様化と進化の過程を解明する」ことである。
本年度は、Diplomonadsに属する原生生物 Giardia lamblia および Palabasalidsに属する原生生物 Trichomonas vaginalis を対象とし、条件検討を中心とする予備的な実験を行った。これらの生物種を大量培養し、リボソームを精製後、蛋白質の分画を得た。2次元電気泳動によりその分画を分離し、パターンを他の真核生物(ラット)や原核生物(大腸菌)のそれと比較した。
また、G.lambliaの一部の蛋白種については、N末端のアミノ酸配列解析を行った。さらに、G.lamblia のL29 および T.vaginalis のL1 の遺伝子解析を実施し、得られた一次構造データに基づくアライメント解析・分子系統樹解析により、当該生物種の進化的位置づけを検討した。
その結果、現在までに、
(1)リボソームの沈降係数は G.lamblia, T.vaginalisのいづれにおいても原核生物と同様の70S型である、
(2)これに対し、いづれのリボソーム蛋白種も2次元泳動のパターンからみる限り明らかに通常の真核生物型である、
(3)G.lamblia,および T.vaginalisのそれぞれは、L29およびL1の分子系統樹上で明らかに真核生物のグループに属する、などの知見を得た。
一方、2次元電気泳動のパターン間の相互比較のための定量化の方法についても検討を開始した。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Wu, G. and Hashimoto, T., Sequence analysis of genes encoding ribosomal proteins of amitochondriate protists: L1 of Trichomonas vaginalis and L29 of Giardia lamblia. Parasitology International, in press (1999)

白倉哲郎, 橋本哲男, 牧泰史, 吉田秀司, 中村文規, 和田明, ミトコンドリアをもたない真核生物 Giardia lamblia のリボソームの性質とその構成蛋白の分析, 第21回日本分子生物学会年会, 1998年12月17日
白倉哲郎, 橋本哲男, 牧泰史, 吉田秀司, 有末伸子, 和田明, 中村文規, Preliminary characterization of the ribosomal proteins of an amitochondriate protist, Giardia lamblia. 第68回日本寄生虫学会大会, 1999年4月7日

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

Diplomonads類に属する原生生物であるGiardia lambliaについて、大量培養によりリボソームを精製し、蛋白質の分画を得る。これを2次元電気泳動法を用いて分離し、そのパターンを他の真核生物や真正細菌、古細菌のそれと比較する。その際パターン間の相互比較のための定量化の方法や種間距離の算定方法等についても検討する。一部の蛋白種についてはN末端のアミノ酸配列解析、さらには遺伝子解析を行ない、得られた一次構造データをもとにアライメント解析、分子系統解析によりGiardia lambliaの当該リボソーム蛋白種の進化的位置づけを検討する。各種統計計算や分子進化学的解析のために大容量大規模データ解析を必要とするため、統計数理研究所を中核とした共同研究体制が必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

Sanchez Lidya B.

ロックフェッラー大学

白倉 哲郎

祇園歯科クリニック

橋本 哲男

統計数理研究所

牧 泰史

大阪医科大学

Muller Miklos

ロックフェッラー大学

吉田 秀司

大阪医科大学