平成20（2008）年度　一般研究１実施報告書

 

課題番号

20−共研−1012

分野分類

統計数理研究所内分野分類

h

主要研究分野分類

3

研究課題名

ProteinDFによるタンパク質全電子計算と統計解析の研究

フリガナ

代表者氏名

サトウ　フミトシ

佐藤　文俊

ローマ字

Fumitoshi Sato

所属機関

東京大学

所属部局

生産技術研究所機械・生体系部門、革新的シミュレーション研究

職　　名

教授

 

 

研究目的と成果（経過）の概要

　我々は、タンパク質のための密度汎関数(DF)法プログラムProteinDFを基に、タンパク質の統合的な量子化学計算シミュレーションシステムの開発を行っている。本プログラムは、Gauss型基底関数展開に基づいた密度汎関数法による、世界初のタンパク質全電子計算が可能なプログラムである。本研究では、活性中心近傍における生体触媒反応をはじめとする量子論に基づくタンパク質の反応・機能解析を行うことを目的とし、現在以下の研究に注力している。
(i) タンパク質第一原理ダイナミクスとその統計処理の研究
(ii) タンパク質波動関数データベース作成と統計処理の研究
　これまでの成果は以下の通りである。
(i) 効率的なタンパク質自由エネルギー計算手法の開発を検討した。本研究の基本的なアイディアは、簡便な経験的力場を用いて高速かつ十分な分子シミュレーションを行い、得られた一部の構造に対してより正確な力場で解析しなおすことで、力学量の熱力学平均値を見積もることである。いくつかのモデル計算から、サンプリングに使用した分子動力学法のアルゴリズムや力場および設定温度との関係などを検討すれば、本研究の手法を有効に適用できる可能性があることが示唆された。
(ii) 一般化学分子の密度汎関数計算では、B3LYPハイブリッド汎関数は数多く実験結果と比較が行われ、その高精度の結果から業界標準となっている。このB3LYP汎関数に必要な4中心2電子積分計算にかかる演算量は理論上O(N4)であり、タンパク質のような巨大分子のシミュレーションでは計算律速になる。本研究では、計算精度を落とすことなく演算量を軽減する方法として幾つかの手法を組み合わせて、最適に高速化される方法を整備した。加えて大規模分散行列を用いた交換相関項の計算方法を開発・実装し、大規模タンパク質のB3LYPをはじめとする様々な汎関数を用いた密度汎関数計算が可能となった。実証計算として、金属タンパク質(ミオグロビン)の全電子計算(2,494原子, 13,750軌道)を達成することができた。今後、振動数等の物理量計算を行い、全電子計算結果の評価を行う予定である。

 

当該研究に関する情報源（論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等）

【論文発表】
・ 千葉貢治，平野敏行，佐藤文俊，岡本正宏, “密度汎関数法による馬心筋一酸化炭素ミオグロビン活性中心モデル計算 − 遠位ヒスチジンが電子状態に及ぼす影響 −”, J. Comput. Chem. Jpn. 7 (2008) 165.

【学会発表】
・ 千葉 貢治，岡本 正宏，平野 敏行，佐藤 文俊, “密度汎関数法による一酸化炭素結合型ミオグロビンの全電子計算”, 日本コンピュータ化学会2008春季年会 (東京)
・ 千葉 貢治，平野 敏行，佐藤 文俊，岡本 正宏, “一酸化炭素ミオグロビンの全電子計算”, 第2回分子科学討論会2008 (福岡)
・ 上村（西野）典子、平野敏行、佐藤文俊, “巨大カノニカル分子軌道計算のための擬カノニカル局在化軌道法の改良”, 第2回分子科学討論会2008 (福岡)
・ 平野 敏行，上村（西野） 典子，恒川 直樹，西村 康幸，佐藤 文俊, “全電子密度汎関数計算による光合成反応中心タンパク質複合体の理論的研究” , 第2回分子科学討論会2008 (福岡)
・ 石川健太郎、上村典子、平野敏行、佐藤文俊, “Study of All-electron Calculation of Putative Acylphosphatase Using Structure-based QCLOs method”, CBI学会2008年大会 (東京)
・ K. Chiba, T. Hirano, F. Sato and M. Okamoto, "Quantum Chemical Study on Horse Heart Carbonmonoxy Myoglobin", The International Conference on "Simulations and Dynamics
for Nanoscale and Biological Systems", March 2009, Tokyo, Japan.

【ホームページ】
・ http://satolab.iis.u-tokyo.ac.jp/
・ http://www.ciss.iis.u-tokyo.ac.jp/

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

上村　典子

東京大学

恒川　直樹

東京大学

平野　敏行

東京大学