平成292017)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

29−共研−1

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

2

研究課題名

ハミルトニアンモンテカルロ法による多変量GARCHモデルのベイズ推定

フリガナ

代表者氏名

タカイシ テツヤ

高石 哲弥

ローマ字

Takaishi Tetsuya

所属機関

広島経済大学

所属部局

経済学部教養教育

職  名

教授

 

 

研究目的と成果の概要

 金融資産収益率時系列のボラティリティを推定するモデルとして良く利用されるモデルとしてGARCHモデルが存在する。このモデルのパラメータ推定には最尤法が用いられることが多い。しかし、多時系列を扱う多変量GARCHモデルの場合は推定すべきパラメータ数が多くなり、最尤法では推定が困難となる。本研究では、パラメータ推定にベイズ推定を用い、多変量GARCHモデルの有効なパラメータ推定方法を研究する。ベイズ推定の実行はマルコフ連鎖モンテカルロ法によって行う。マルコフ連鎖モンテカルロ法には様々な方法が存在し、GARCHモデルのパラメータ推定にMetropolis-Hastings法を使った研究があるが、本研究ではハミルトニアンモンテカルロ法を用いる。ハミルトニアンモンテカルロ法は、変数を同時にアップデイトできる利点があり、多数のパラメータ推定を実行する場合、効率的に推定できる可能性がある。また、一般のマルコフ連鎖モンテカルロ法では、並列化は自明ではないが、ハミルトニアンモンテカルロ法は並列化が容易であるという利点があり、パソコンのGPUを利用した並列計算による高速化も可能となる。
 本研究では、まずハミルトニアンモンテカルロ法によって通常のGARCHモデルのパラメータ推定を実行する方法を開発し、ハミルトニアンモンテカルロ法に必要な分子動力学シミュレーションにおける適切なステップサイズやシミュレーションの長さを研究した。そして、あらかじめパラメータの分かっている人工的時系列に対して推定を実行し、正しいパラメータが推定できることを確認した。また、ハミルトニアンモンテカルロ法には効率を上げるための手法がいくつか存在するので、それらについても研究を行った。その結果、分子動力学シミュレーションの実行において、Minimum-Norm積分法を利用することによって推定の効率化が図れることが分かった。今後は多時系列を扱う多変量GARCHモデルにおけるパラメータ推定がハミルトニアンモンテカルロ法によってどの程度効率的に行えるかを研究してゆく予定である。