平成252013)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

25−共研−2081

分野分類

統計数理研究所内分野分類

j

主要研究分野分類

2

研究課題名

適切な統計処理を支援するための次世代情報基盤とその応用に関する研究

フリガナ

代表者氏名

ハヤシ タカフミ

林 隆史

ローマ字

HAYASHI TAKAFUMI

所属機関

会津大学

所属部局

コンピュータ理工学部

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

27千円

研究参加者数

7 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

センサーデータを含めて、ビッグデータとよばれるような膨大なデータを統計処理し解析する必要性が様々な情報基盤やスマートグリッドなどの社会基盤などで高まってきている。
これらで用いられるシステムで統計処理や統計解析が適切に行われるためには、1)ユーザが適切な統計処理を選択し、適切な使い方ができるような環境の整備提供、2)適切なモデリングを支援するしくみ、3)様々な精度で測定や調査で集められたデータを適切に解析するための理論的枠組みとその実現方法の開発、4)種々のOutlierを適切に処理するしくみ、4)missing data imputation のための仕組みの整備と提供が必要である。さらに、5)センサーネットワークのセンサーデータなど本来異なった扱いをすべきデータが混在している場合の適切な処理のための基盤の整備が必要である。
平成25年度は、これらの課題の解決にむけて、
1) 我々が開発、構築してきたメッセージング基盤の機能にComplex event processing を追加することで、データの測定方法や測定環境、データそのものの値などに応じて、異なったデータ処理にリアルタイムでふりわける基盤の基本設計とComplex Event Processing 処理を含めた基本機能の試作を行った。この仕組みによって、複数のモデルが考えられるような場合に、並行して異なったモデルに基づいたデータ解析を行うことや、Outlierの判定が難しいデータについて、異なった判定基準を用いた処理を同時に行うことが可能となる。
2) 上記課題を解決するためには、リアルデータを取得ながらリアルタイムで処理するだけではなく、元データ、中間処理結果などを保存して、後の検証に使えるようにすることが重要である。そこで、柔軟性と拡張性を備えたデータ蓄積基盤とそれと連動したデータ処理基盤の基本設計を行った。これについてもプロトタイプの構築に着手した。
3) 構築中の情報処理基盤について、情報セキュリティの観点から、認証基盤の構築、秘密分散法を用いたデータの保存についての検討を行い、一部分の作成を行った。
4) パーソナルデータは、ライフコースデータ、疫学調査、広域のエネルギーマネジメントなどで重要な意味をもつとともに、慎重に扱う必要のあるものである。平成26年度に予定されている個人情報保護法の改定や個人情報に関する海外の動向は、制度や技術の変化への迅速かつ柔軟な対応の重要性が高まっていることを示している。本研究では、メッセージ・フィルタリングなどの機能や秘密分散法を用いたパーソナルデータの漏洩防止の検討を行った。
5) パーソナルデータを扱うシステムでは、ヒューマンエラー対策と、それぞれのパーソナルデータへのアクセスや処理記録をどう残すかが重要である。そこで、本研究課題では、メッセージング・ヒストリと呼ばれる機能を用いて、データアクセスや処理の記録を残す方法を検討した。
6) センサーデータを用いた処理では時刻の同期が重要である。そこで、データ同期用の系列の検討を行った。
7) 本研究課題で検討している情報基盤で要求される課題は、検討している手法を実際に応用することで、より明らかになると考えられる。そこで、スマートグリッド用センサーネット、エネルギーマネジメントシステム、地域健康環境情報基盤への応用を上記の各種検討と並行して行った。スマートグリッドでは、同じ内容(例えば、消費電力)も用いるセンサーによって異なった精度を持つ。これらを統合するためのシステムの試作を開始した。
8) スマートグリッドでは、データを統計処理した結果を用いた制御を行う必要がある。この点についての理論的検討を開始した。
9) 主に、血圧データを対象とした健康情報基盤の検討を開始し、パーソナルデータを安全に保存するための秘密分散データストアや、各種データの関係をグラフデータベースを用いて関連づけるシステムの構築を開始した。後者は、モデリング、データ測定系の諸元(センサーの測定精度やセンサーの設置環境)、処理結果に要求される精度などを結びつけることで、より適切な統計処理の実現に寄与するものである。この内容は、"A NovelNetwork-centric Approach to a Secure and Elastic Regional Healthcare System with a Messaging Infrastructure"というタイトルで、SICE 2014に投稿した(現在査読審査中)。

上記について、いくつかの成果を得て、論文などに発表した。
平成26年度は、これらの検討をさらに進めていく予定である。

関連発表論文
1) Jian CHEN, Jiro Yamazaki, Daishi Yoshino, Yuichi Takahashi, Yoshinobu Tanno, Yasuhiro Abe, Hajime Tokura, Jiro Iwase, Hideyuki Fukuhara, Tetsu Saburi, Ryutaro Fujita, Takafumi Hayashi, "Semantic-Addressable Messaging Network based on Event Ontology for Sensor and Controller Network,"roc. of SICE2013, pp.1-27, SICE, 2013
2) Takafumi Hayashi*, Hideyuki Fukuhara, Yasuhiro Abe, Masayuki Hisada, Jiro Yamazaki, Hajime Tokura, Daishi Yoshino, Jian CHEN, Yuichi Takahashi, Yoshinobu Tanno, Tetsu Saburi, Ryutaro Fujita, Toshiaki Miyazaki, Jiro Iwase, "A Network-Centric Approach to Sensor-Network for Smart Grid," Proc. of SICE2013, pp.28-33, SICE, 2013
3) Takafumi Hayashi、Hideyuki Fukuhara、Yasuhiro Abe, Masayuki Hisada、Jian Chen、Daishi Yoshino、Yuichi Takahashi, Jiro Yamazaki、Hajime Tokura, Toshiaki Miyazaki、Tetsu Saburi, Ryutaroh Fujita、Jiro Iwase, "A Novel Intelligent Infrastructure for Social Networking Services using a Messaging Network," Proc. of APNOMS 2013, pp.1-3, IEEE, 2013  
4) Takafumi Hayashi, Takao Maeda, Shigeru Kanemoto, and Shinya Matsufuji, "Low-Peak Factor Optimal Zero-Correlation Zone Sequence Set and Its Applications," Proc. of IWSDA2013, pp.72-75, IEICE, Oct. 2013,
5) Toshiaki Miyazaki, Hiroaki Iwata, Koji Kobayashi, Shoichi Yamaguchi, Deze Zeng, Song Guo, Junji Kitamichi, Takafumi Hayashi and Tsuneo Tsukahara, "Demand-addressable Sensor Network for Active Information Acquisition," Proc. of ACM ICUIMC 2014, p.1, ACM, Jan. 2014
6) 伊藤悠哉・田畑隼人・渡部奨大・門馬健太・林 隆史, "メッセージング・ネットワークにおけるメッセージ訂正手法の検討"
平成26年電気学会全国大会, 愛媛, 2014


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Jian CHEN, Jiro Yamazaki, Daishi Yoshino, Yuichi Takahashi, Yoshinobu Tanno, Yasuhiro Abe, Hajime Tokura, Jiro Iwase, Hideyuki Fukuhara, Tetsu Saburi, Ryutaro Fujita, Takafumi Hayashi, "Semantic-Addressable Messaging Network based on Event Ontology for Sensor and Controller Network,"roc. of SICE2013, pp.1-27, SICE, 2013

Takafumi Hayashi*, Hideyuki Fukuhara, Yasuhiro Abe, Masayuki Hisada, Jiro Yamazaki, Hajime Tokura, Daishi Yoshino, Jian CHEN, Yuichi Takahashi, Yoshinobu Tanno, Tetsu Saburi, Ryutaro Fujita, Toshiaki Miyazaki, Jiro Iwase, "A Network-Centric Approach to Sensor-Network for Smart Grid," Proc. of SICE2013, pp.28-33, SICE, 2013

Takafumi Hayashi、Hideyuki Fukuhara、Yasuhiro Abe, Masayuki Hisada、Jian Chen、Daishi Yoshino、Yuichi Takahashi, Jiro Yamazaki、Hajime Tokura, Toshiaki Miyazaki、Tetsu Saburi, Ryutaroh Fujita、Jiro Iwase, "A Novel Intelligent Infrastructure for Social Networking Services using a Messaging Network," Proc. of APNOMS 2013, pp.1-3, IEEE, 2013
  
No4.Takafumi Hayashi, Takao Maeda, Shigeru Kanemoto, and Shinya Matsufuji, "Low-Peak Factor Optimal Zero-Correlation Zone Sequence Set and Its Applications," Proc. of IWSDA2013, pp.72-75, IEICE, Oct. 2013,

Toshiaki Miyazaki, Hiroaki Iwata, Koji Kobayashi, Shoichi Yamaguchi, Deze Zeng, Song Guo, Junji Kitamichi, Takafumi Hayashi and Tsuneo Tsukahara, "Demand-addressable Sensor Network for Active Information Acquisition," Proc. of ACM ICUIMC 2014, p.1, ACM, Jan. 2014

伊藤悠哉・田畑隼人・渡部奨大・門馬健太・林 隆史, "メッセージング・ネットワークにおけるメッセージ訂正手法の検討"
平成26年電気学会全国大会, 愛媛, 2014


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究会は開催しなかった。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

阿部 泰弘

会津大学

大野 ゆうこ

大阪大学大学院

田中 秀幸

東京大学

椿 広計

統計数理研究所

戸倉 一

会津大学

山崎 治朗

会津大学