平成282016)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

28−共研−1003

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

5

研究課題名

ステントストラット間の血流速度に対する相互作用に関する研究

フリガナ

代表者氏名

オオタ マコト

太田 信

ローマ字

Ohta Makoto

所属機関

東北大学

所属部局

流体科学研究所

職  名

准教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

血管壁が瘤状に肥大化する病気である脳動脈瘤の治療法に血管内治療がある.近年ではフローダイバータス テント(FD)と呼ばれる,動脈瘤内の血流を低減させ血栓化を促す医療デバイスが注目を集めている.現状の FDは一様に密なストラットで構成されており,低多孔率のため親血管が血栓で塞栓する可能性が指摘され ている.これに対して,近年では最適化と呼ばれる手法を用いて,高多孔率でありながら血流低減効果の高 いステント形状の探索が行われている.しかしながらこれまでの研究において,最適化は多数の計算モデル を必要とすることから,微細なFD表面形状に適合した計算格子を作成するために作業者に大きな負担がか かることや計算時間が大量になることが指摘されていた.例えば,通常微細なFD表面形状の計算格子作成 には1週間程度を要し,時には格子作成が困難な場合もある.これは,FD表面形状のスケールと動脈形状の スケールには約200倍程度の差があり,そのスケール差に適合した計算格子形状の作成パラメータを見つけ 出すのが困難なためである. そこで申請者らは理想形状動脈瘤に対し,格子ボルツマン法と擬似焼きなまし法を組み合わせることにより ,ステント形状作成,計算格子生成,数値流体計算,血流低減効果の評価の一連の過程を自動化した,ステ ント形状最適化プログラムの開発を行い,自動化プロセスの有効性を示した.その結果,これまでの動脈瘤 への流入を妨げるためには,流入領域にストラットが配置されることが重要であると示唆された.また,昨年度は,加工可能なステントのでの血流最適化ステントが開発できるプログラムが開発できた.今後の計画として,現在のステントの持つ血流への影響を調べ,最小限の労力で最適なステントへの加工変更を可能とする必要がある.このためには,各ステントストラット各々が持つ血流速度に対する影響だけではなく,ステントストラット間で互いに血流へ影響させている状況を解明する必要があり,本解明を目的とする.
成果として,ストラットの全探査を自動で行う事のできるプログラムを開発した.その結果,ある動脈瘤に対して,最も血流を下げ,かつそのストラット位置が目的としている場所からずれたとしても血流低下の効能が維持されるステントストラット間隔を見つけることができた.これは,テーラーメード医療機器の設計指針の構築に最重要なことであり,大きな意味を持つ.この成果により,13th International IntraCranial Stent Meetingにおいて,ポスター賞を受賞した.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Kazuhiro Watanabe, Hitomi Anzai, Makoto Ohta
FLOW SIMULATIONS TO ESTABLISH THE RELATIONSHIP BETWEEN THE INFLOW ZONE IN THE NECK OF A CEREBRAL ANEURYSM AND THE POSITIONS OF STRUTS
[International Mechanical Engineering Congress & Exposition 2016, November 11-17, Phoenix Convention Center, Phoenix, AZ, USA]

Kazuhiro Watanabe, Hitomi Anzai, Makoto Ohta
Exploring the relationship between the inflow zone and strut positions within the aneurysm orifice: a hemodynamic simulation study(P35)
[13th International IntraCranial Stent Meeting, Nov. 26-27, 2016, Kobe, Japan]

Hitomi Anzai, Kazuhiro Watanabe, Makoto Ohta
Optimal Interval of two struts relative to aneurysm inflow
[VII European Congress on Computational Methods in Applied Sciences and Engineering, June 5-10, Crete, Greece]

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

テーマ:Flow simulations to establish the relationship between the inflow zone in the neck of a cerebral aneurysm and the positions of struts
日時:2016年8月23日
場所:スイス
参加者:全体で10人

テーマ:脳動脈瘤ステント
日時2016年11月26,27日
場所:神戸
参加者:全体で200名程度

テーマ:脳動脈瘤治療
日時2016年11月21日
場所:仙台
参加者:30名程度

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

安西 眸

東北大学

Zhang Mingzi

東北大学

中野 慎也

統計数理研究所

渡邉和浩

東北大学