平成232011)年度 共同研究集会実施報告書

 

課題番号

23−共研−5002

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

大型野生動物データと統計数理

フリガナ

代表者氏名

シマタニ ケンイチロウ

島谷 健一郎

ローマ字

Shimatani Kenichiro

所属機関

統計数理研究所

所属部局

モデリング研究系

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

580千円

研究参加者数

28 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 クマやクジラ、アホウドリなどの大型野生動物は、自然環境下で垣間見かけるだけで人間に興奮を与える。そんな動物たちの生き様に対して子供心に関心をあおられ、シートン動物記やムツゴロウ動物王国を読み漁った思い出を有する人は多い。
しかし、いざ生物科学の一環として大型動物を対象にしようとすると、こうしたロマンとは裏腹に、困難ばかりに出会う。調査を始めようにも、そもそもどこに何頭生息しているのかがよくわからない。個体を目撃しても、すぐに逃げられてしまう。野外調査といっても大半は足跡、糞、食痕などの痕跡を追う作業で、肝心の動物を見ない日が続く。そんな地道な調査を続けても、収集できるデータは質・量ともに限られており、動物学の学術雑誌に値する論文をまとめられる保証はない。
ところが、今世紀に入って状況が変わってきた。
まず、野外で自動的に撮影するカメラや、糞、毛などの痕跡からのDNA分析など、いつどこにいた、という情報を、人による目視以外で得る技術が整ってきた。並行して、人里での目撃情報やハンターからの情報提供、農地の獣害といった行政機関に集まる多様かつ膨大な情報が、データとして蓄積されてきた。さらに、動物装着型データロガーにより、動物がいつどこで何をしていた、という情報を含む大量のデータが得られるようになった(バイオロギング)。こうして、大型野生動物についても、生物科学を実践するのに欠かせないデータが得られる時代を迎えたのである。
ところが皮肉なことに、いざ喉から手が出るほど欲しかったデータを手にしてみると、案外とその豊富な情報を活用できない現実に直面する事態となった。というのも、データが大量になり、かつ、中には不正確さを伴う情報や、特定の側面のみの情報が少なくない。それらから真実を抽出する、あるいは誤差も含めて現状を正しく認識するには、統計モデリングが不可欠である。ところが、そうした統計数理の素養を動物学のフィールド研究者が十分に有していない以前に、そもそもそうしたデータを扱う統計手法も著しく未成熟なのである。
野生大型動物データの大半が、日時・時刻と位置という情報を含む。時間と空間を含むデータでは、いわゆる一般化線形モデルでは扱えないのが普通で、時系列モデル、空間モデル、時空間モデルが要求される。それも近年のベイズ統計の普及により発展の著しい昨今であるが、データと現場に合わせた創意工夫が不可欠で、諸々の野生動物データに対して確立されたデータ解析手法があるわけでは全然ない。
そこで2011年度、様々な動物データを有し、統計モデリングによって様々な情報を抽出しようと志す人による共同利用研究集会を企画し、2011年12月15-16日、以下のような3部構成で開催した。
一つ目は、動物データを扱う基本となる統計手法の解説講演である。2つ目はいわゆる研究成果発表であるが、論文化され確立された成果より、複雑なデータを前に試行錯誤している最中の研究について発表してもらうべく、動物学の最前線にいる若手の人に講演をお願いした。3つ目は、講演をしない参加者の中の有志による自己紹介的研究紹介である。1人5分前後で、扱っている動物や地域、収集したデータや試しているモデリングについて、研究集会会場で初めて会った人とも話題にして議論するための最低限の紹介を、互いにする場である。
以上のような研究集会が実際のところどのようなものだったかを記録すべく、講演を録音しテープ起こしをして(または講義ノートを文書化して)講演中に用いたスライドと合わせて編集し、講演を文書で再現し、研究リポートとした。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

統計数理研究所共同利用研究リポート 279

大型野生動物データと統計数理

2012年3月

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

有本 勲

東京農工大学

飯島 勇人

山梨県森林総合研究所

伊勢 武史

兵庫県立大学

井上 裕紀子

北海道大学大学院水産科学院

奥山 隼一

京都大学

越智 大介

水産総合研究センター 国際水産資源研究所

風間 健太郎

名城大学

粕谷 英一

九州大学

北原 祥

北海道大学大学院水産科学院

久保 拓弥

北海道大学

久保田 康裕

琉球大学

熊谷 直喜

琉球大学

小林 由美

北海道大学

佐々木 裕子

北海道大学大学院水産科学院

清水 邦夫

慶應義塾大学

杉浦 里奈

名城大学

高須 夫悟

奈良女子大学

高野(竹中) 宏平

総合地球環境学研究所

西沢 文吾

北海道大学水産科学院

野田 琢嗣

京都大学大学院

平岩 将良

東邦大学

平田 和彦

北海道大学大学院 水産科学院

古川 誠志郎

長崎大学大学院

堀本 高矩

北海道大学大学院水産科学院

松本 経

北見工業大学

依田 憲

名古屋大学

渡邉 謙二

横浜国立大学