昭和621987)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

62−共研−74

専門分類

7

研究課題名

視覚情報処理過程の統計数理解析

フリガナ

代表者氏名

フクダ アツシ

福田 淳

ローマ字

所属機関

大阪大学

所属部局

医学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

脳内の神経細胞は,外界の情報を活動電位の発火頻度としてコードし,より上位の中枢に有効な生体情報を伝送している。本研究では,視覚情報の主要な伝達系としてしられる外側膝状体からその中継機能を司どる主細胞の活動電位を記録し,その発火パターンを統計数理学的に解析処理することによって,脳内の視覚情報処理機構を新しい角度から検討する。


I.実施状況
(1)昭和62年9月5日(土)
(A)神経回路の統計数理モデルについて尾形良彦先生と検討する。その際,視覚情報の脳内中継所である外側膝状体に異なった種類の情報を処理するY型,X型,W型の3型の細胞があり,それらが動物の意識水準の変化に応じて異なった脳内抑制機構の影響を受けることを示す私達の実験結果について説明した。そのパラダイムを土台にして実際に慢性ネコからニューロン活動を記録したデータを基に,外側膝状体の視覚情報のゲーティングのモデルを組みコンピューターによるシミュレーションが可能かどうかを打診した。
尾形先生から地震の発生パターンとその予知のための統計数理モデルを紹介していただき,また神経細胞のスパイク・トレインの分析に御自身で考案されたLog linear self−excitingモデルを適用された試みをも紹介され,その際に問題となった諸点をモデル適用の難かしさについて述べられたが,外側膝状体の3型の細胞の抑制機構にも興味を示され,今後生のデータをもとにそのモデル化について検討してゆくことになった。
(B)さらに網膜の神経節細胞の一つであるα型細胞の樹状突起のフラクタル解析の試みについて触れその意義について話し合い,地震研究におけるフラクタル解析の応用についての報告が記載されている統計数理モデル研究会成果報告書を資料としていただいた。又,後半,田村義保先生にも加わっていただき,共同研究の内容を検討していただいた。
(2)昭和62年12月12日(土)
(A)外側膝状体のY型,X型,W型の細胞活動を記録したデータを持参し,田村義保先生にお見せしたところ,ペンレコーダーによるスパイク活動の記録よりもフィルム横流しによる写真撮影のスパイク記録の方がデータとして適当であると指摘され,次回それを持参して具体的なモデルを検討することにした。
(B)私達がα細胞の樹状突起のフラクタル解析を行なった結果を提示し,コンピューターによるフラクタル解析の可能性とそのプログラムを組むに当って最小二乗法による回帰有線の傾きのweightingの必要性について検討する。
II.成果
(A)成果については生のデータを現在なお集積中である。
(B)網膜のα型細胞は光の点灯反応するON型と光の消灯に反応するOFF型の2種類に区別されるが,ON型,OFF型8個ずつの樹状突起のフラクタル解析を行なった結果,OFF型のフラクタル次元は1.48〜1.64(mean1.53±0.05),ON型は1.21〜1.61(mean1.38±0.12)と一般にON型よりOFF型の方が高く,また網膜中心と周辺部でOFF型の次元にあまり変動がなかったのに対し,ON型は周辺部で顕著に次元が低くなることが明らかとなった。
その研究成果を昭和63年2月24日生理学研究所におけるコンフレンスで一部紹介し,又,その大要をBiomedical Researchに発表した。さらに昭和63年度第65回日本生理学大会においてその詳細を発表した。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1.第13回生理研コンファレンス。S.63.2.23−24.
Morphology of alpha cells in the albino rat retina.
Y.Fukuda,K.Morigiwa & M.Tauchi.
2.第65回日本生理学会大会。S.63.4.4.
−アルビノラット網膜のアルファ型神経節細胞の形態
福田淳,田内雅規,森際克子,沢井元
−アルビノラット網膜のアルファ型神経節細胞のフラクタル解析
森際克子,福田淳,田内雅規


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

ネコの外側膝状体には,互に異った視覚情報を選択的に伝送する,X型とY型の2種類の中継細胞が存在する。本研究では,1)定常光の刺激強度の変化や,動き光刺激の速さの変化に応じて,X細胞或いはY細胞の出す活動電位のパルス列のパワー・スペクトル密度を調べ,そのゆらぎの動的性質を調べる。2)X細胞とY細胞は各々異った抑制機構によってその発火パターンが調節されるといわれている。各々の細胞が受ける抑制はスパイク間隔の延長として捉えられるので,パルス間隔の時条列を系統的に解析することからその抑制過程を定量的に把握する。3),1),2)の解析を麻酔下の動物のみならず,覚醒時の状態でも行う。これらの研究には,統計数理の正確な知識と適切な適用が要求されるので,共同研究が必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

田村 義保

統計数理研究所

森際 克子

大阪大学大学院