平成202008)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

20−共研−1011

分野分類

統計数理研究所内分野分類

g

主要研究分野分類

1

研究課題名

離散確率分布論とその統計的応用研究

フリガナ

代表者氏名

イノウエ キヨシ

井上 潔司

ローマ字

Inoue Kiyoshi

所属機関

成蹊大学

所属部局

経済学部

職  名

准教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

有限個の文字を値にとる離散確率変数列(試行列)において,長さ有限の文字列(パターン)や連に関する確率分布の厳密な導出方法の提案,およびその統計的応用の研究を行ってきた.これまでに考察してきた確率分布は主に,(1)パターン(または連)が与えられた回数だけ起こるまでの待ち時間分布, (2)長さ有限の試行列において,パターン(または連)の起こる数の分布,に大別される.これらの確率分布論研究は理論的な関心を集めているだけではなく,さまざまな諸分野へ極めて有益な方法論を提供し続けている.最近特に重要度が増している,走査型統計量,パターンマッチング,信頼性工学,品質管理,DNA系列の統計的解析といった研究分野への応用可能性を念頭に置きながら,いままで多くの研究成果を論文としてまとめ,学会・研究集会で発表してきた.
今年度の結果は次のとおりである.
 上記2つの確率分布(1),(2)の関係を調べ,この二つの分布族間に存在する一種の逆関係を明らかにした。この逆関係は両分布の母関数を通して反転構造をとっていることを示した。この結果によって両分布間の関係を明瞭に捉えることができ,一方をもう一方の逆分布としてその母関数を陽な形で表現することが可能なものとなった.結果として考察可能な分布族の幅の拡大へとつなげることができた。応用例として,一般化された「誕生日問題」,「クーポン集め問題」を考察し,確率の厳密な計算方法を提案し,その有用性を数値例とともに例証した.また過去の研究結果との比較も合わせて行っており,近似的に解析されていた結果のいくつかが非常に粗いものであることも指摘し,厳密な解析に基づく分布理論研究の重要性を強調した.これらの結果はInoue,K.and Aki,S.(2009) "Communications in Statistics−Simulation and Computation, Vol. 37(5), 844-862."に「Methods for studying generalized birthday and coupon collection problems」として掲載され,また, 2008年度統計関連学会連合大会(9月7日〜10日),2008年度科学研究費研究集会「官庁統計データの公開における諸問題の研究」(10月23〜24日)において講演を行った.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

・Inoue, K. and Aki, S. (2008). Methods for studying generalized birthday and coupon collection problems, Communications in Statistics−Simulation and Computation, Vol. 37(5), 844-862.

・2008 年 統計関連学会 連合大会 (慶応大学)
講演タイトル:On generalized birthday and coupon collection problems

・2008年 科学研究費研究集会「官庁統計データの公開における諸問題の研究」(統計数理研究所)
講演タイトル:分布の双対関係とその応用

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

安芸 重雄

関西大学

平野 勝臣