平成41992)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

4−共研−68

専門分類

7

研究課題名

競合モデルに基づく死因分析

フリガナ

代表者氏名

ノダ カズオ

野田 一雄

ローマ字

所属機関

明星大学

所属部局

理工学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

9 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

動物の死亡ないし寿命短縮の原因が複数個あって競合する場合には、着目する原因による寿命短縮の確立分布はそのままの経験分布からでは競合する原因の影響によって見かけ上の推定分布しか得られない。本研究では、着目する原因が単独に作用すると規定されるモデルを設定し、これによるimplicitな生存曲線を推定することを中心に、死亡あるいは寿命短縮の構造を解析する。


対照群として雌マウス非照射群116匹、同X線(600R)全身照射115匹、同(800R)頭部照射116 匹、同(800R)躯幹部照射114匹、同(800R)下肢部照射117匹の終生飼育実験データについて、X線被曝によるマウスの寿命短縮の状況を調べる解析を行った。
死因が白血病、腫瘍等複数個あり、これらの影響が競合するため、一方において各死因による観測された生存曲線を求めると同時に、他方において着目する死因の他に死因が存在しないと想定する場合の寿命がワイブル分布にしたがうものと仮定し(これらの適合の良さは、以前の研究においてワイブル確率紙を用いる方法によって験証されている)、競合死因モデルによるこれらのimplicitな生存曲線の最尤推定を行った。
その結果、いずれの死因においても、観測された生存曲線から推定される寿命短縮はimplicitな推定生存曲線からのそれらより大きいことが判明した。このことは、競合死因モデルによらない単純な観測された生存曲線からではみかけ上の寿命短縮にわざわいされる危険性を示している。非照射群との比較において、白血病、腫瘍、炎症の群すべてに有意差がみられた。
腫瘍の群を肺腫瘍、乳腺腫瘍、卵巣腫瘍、その他の腫瘍に細分した場合、肺腫瘍については各部位において、乳腺腫瘍については躯幹部、下肢部において、その他の腫瘍については全身、下肢部において有意差がみられた。他のものについては、観測値の不足より判断を保留せざるを得なかった。これらの検定は、平均値推定量の極限分布を求めることにより漸近最適テストの構成により実現された。
なお、白血病については腫瘍に比し、マウスが早期に死亡する確率が高く、晩期には逆の傾向が観られるが、この特徴を生存曲線の形態の有意差によって検定する方法を継続検討中である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Sato,F.,Noda,K.,Miyaoka,E.,Shimizu,Y.,Murakami,M.,Endoh,D.,and Hashimoto,N.: A statistical test on shortening of latent periods in experimental radiation carcinogenesis under competing risks,to appear in J.Radiation Research (1993).


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

本年度は、昨年度の研究にひき続き、実験によって得た放射線被曝マウスの死亡等記録データの解析を推進する。昨年度研究において、各被曝部位群のそれぞれにおいて、着目する死因についてのimplicitな生存曲線が二つのタイプに分けることが判明した。すなわち、白血病においては比較的早期にマウスの死亡が始まり晩期には死亡の確立が小さくなるが、肺腫瘍等による生存曲線では反対の結果が推定される。この結果にふまえ、死因相互の生存曲線の比較を可能にする有意義検定法を開発する。この方法によって、相対的な意味における晩発効果の構造を解析する。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

加藤 寛夫

国立水俣病研究センター

佐藤 文昭

北海道大学

清水 由起子

放射線影響研究所

鈴木 和幸

電気通信大学

田ノ岡 宏

国立がんセンター

三野 大来

順天堂大学

宮岡 悦良

東京理科大学

村上 征勝

統計数理研究所