平成242012)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

24−共研−2046

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

3

研究課題名

大規模な保健衛生データの統計解析

フリガナ

代表者氏名

トミタ マコト

冨田 誠

ローマ字

Makoto Tomita

所属機関

東京医科歯科大学

所属部局

医学部附属病院 臨床試験管理センター

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

194千円

研究参加者数

6 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

ある領域における疾病の発生率などのように、市区町村や都道府県などの行政区域などのメッシュデータでない領域ごとに得られるデータに対して、空間的な地域集積性(有意に高いまたは低い値を示す地域) を同定し検出することは、疾病の発生原因探索のために大変有効であることは明らかであろう。疾病に限らず、たとえば日本では自殺者数が急増したまま、この15年ほど変わらず非常に多い水準を保ってしまっているが、これに対しても、空間的な地域集積性を示すことは大変意義のあることである。公衆衛生や疾病ではメッシュデータではなく行政区域のような歪な領域で収集されることが多く、かつ大規模な領域のデータでは解析方法に万能なものが少ない。空間集積性を同定する手法は多くはないが、有用なFlex scanやEchelon scanを用いて、有用な集積地域を検出し、困難な現状を少しでも解決へと導きたい。時空間解析での結果は第1ホットスポットは北関東・北陸地域・飛騨周辺を中心に領域が増減し, 第2ホットスポットは東北地方となり, 正に時間的な流れで把握することができた. さらに期間ごとの増減について、結果をまとめた。期間ごとの増減率を利用した空間解析での結果は,男性は特に急増した第3〜5期に大都市圏に近い領域が集積地域として検出され,また,女性は第4〜6期に大都市圏に近い領域が検出された。以上のように男性・女性ともに,首都圏または近畿圏などの大都市圏を中心とした領域が集積地域として検出され,それぞれ異なる推移・傾向を示した。しかし,時空間解析を用いた先行研究14)では,集積地域として大都市圏は全く検出されていない。特に自殺者数が多い男性に注目すると,自殺者数が大きく増加した後と思われる第5〜6期においては,期間ごとの増減率を利用した空間解析での結果でも,大都市圏は集積地域としては同定されていない。これに対し,我々は年間の自殺者数が3万人を超えた第5期以降(1998年以降)の超高水準期に移る前の大都市圏での変化が,現在の自殺者数増加という状況に影響を与えていないか,という点に着目した。自殺死亡率の純粋な時空間データから求められた集積エリアにおいて,その他の高いエリアによってマスクされて検出されなかった大都市圏を,増減率を用いることによって検出できたと考えられる。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

空間データベースを用いた隣接情報の作成と自殺データの集積性, 久保田 貴文, 藤野 友和, 冨田 誠, 石岡 文生, 藤田 利治, 統計数理, accepted at 2012/12/25.

日本人自殺者数とその増減による空間集積性の評価, 冨田 誠, 石岡 文生, 久保田 貴文, 藤田 利治, 厚生の指標, 60(6)に掲載予定, accepted at 2013/03/13.

Cluster analysis of age-grouped suicide data in Japan with spatio-temporal structure, Takafumi KUBOTA, Makoto TOMITA, Fumio ISHIOKA and Toshiharu FUJITA, Programme and Abstracts, 20th International Conference on Computational Statistics (COMPSTAT2012), p. 15, Limassol, Cyprus, (2012, 8)

Spatio-temporal Clustering of Age Grouped Suicide Data in Japan, Takafumi KUBOTA, Makoto TOMITA, Fumio ISHIOKA and Toshiharu FUJITA, Book of Abstracts, Analysis and Modeling of Complex Data in Behavioural and Social Sciences (JCS-CLADAG2012), p. 49, Anacapri, Italy, (2012, 9)

朝日新聞 beリポートにて「自殺者が増える意外な要因」の記事が掲載された。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

第2回 自殺リスクに関する研究会, 2012年10月17日, 統計数理研究所, 50名。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

石岡 文生

岡山大学大学院

久保田 貴文

統計数理研究所

椿 広計

統計数理研究所

藤野 友和

福岡女子大学

文 勝浩

Pusan University of Foreign Studies