平成172005)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

17−共研−8

専門分類

6

研究課題名

地震波形データ解析による地球内部構造モデル推定

フリガナ

代表者氏名

タケウチ ノゾム

竹内 希

ローマ字

Takeuchi Nozomu

所属機関

東京大学

所属部局

地震研究所

職  名

助手

所在地

TEL

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研究目的と成果の概要

本研究の目的は,地震波形データをデータとして逆問題を解くことにより,詳細な3次
元地球内部構造を推定することである。地震及び観測点分布は著しく偏っているため,
地震波形データの持つ情報も偏っており,これがrobustなモデル推定を阻害している。
特に特定の地震?観測点を結ぶ地震波線方向に長く解像度カーネルが伸びるため,得ら
れるモデルが使用するデータセットに強く依存することが指摘されている。
 私たちのグループでは,この問題を解決するため,地震波形データがどの領域をどの
程度の密度でサンプリングするかを機械的に評価する指標を導出し,これを用いて全領
域でほぼ一様なサンプリングを実現するデータの重み付けを行うインバージョン手法を
開発した(Takeuchi & Kobayashi 2004,Geophysical Journal International)。また
この手法を用いると,解像度カーネルがより等方的になるため,使用するデータセット
に比較的依存しない,robustなモデル推定が可能になることを示した。
 本共同利用では,上記インバージョン手法を大規模データセットに適用することによ
り,詳細な地球モデル構造を推定することを目標としている。平成17年度には,前年
度開発したソフトウェアを活用して,実際に予備的な大規模インバージョンを実施し
た。
 従来の内部構造では,3次元不均質構造を適当な2次元不均質構造におきかえて
不均質構造の影響を評価していたが,私たちのインバージョンでは,3次元不均質構造
の影響を厳密に評価している。このため必要とする計算機資源が膨大となり,大規模イ
ンバージョンはできなかった。しかし本年度は統計数理研究所の大型計算機を活用する
ことにより,大規模インバージョンを実施した。用いた地震の数はおよそ200,波形の
本数は約16,000であり,このデータセットの規模は最近の(上記近似を用いて行われ
た)モデル推定で使われたものと同規模である。
 インバージョン手法の改良,計算手法の改良を通じ,特にデータが乏しかった海洋下
で解像度が改善された。下部マントル・上部マントルには,海洋の下に小規模マントル
対流上昇流に対応すると思われる短波長の低速度異常が存在すること,これらの短波長
低速度異常が,下部マントル・上部マントルの最上部・最下部でともに不明瞭になるこ
とが検出された。これはマントル対流が基本的には下部マントル・上部マントルの2層
対流をなしおり,それぞれの最上部・最下部に境界層を形作っていることを示唆するも
のである。