平成232011)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

23−共研−2003

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

認知課題難易度の量的変化に伴う前頭前野脳活動の推移に関する研究

フリガナ

代表者氏名

キクチ センイチロウ

菊地 千一郎

ローマ字

Kikuchi Senichiro

所属機関

自治医科大学

所属部局

精神医学講座

職  名

講師

配分経費

研究費

40千円

旅 費

18千円

研究参加者数

5 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

これまでの認知課題難易度の推移に伴う前頭前野の活動に関する研究は、質的難易度と、量的難易度の両方の観点から研究を進めてきた。このうち、質的難易度の変化に伴う研究に関しては、難易度の上昇に伴い、必ずしも前頭前野活動が上昇するわけではない、という結果がもたらされた。また、右の腹外側前頭前野において勝ち条件と負け条件の活動に有意な差が認められた。この研究成果は平成23年9月1日に京都で行われた第13回ヒト脳機能マッピング学会に発表された。また、本研究は英文雑誌に受理され現在印刷中である。
平成23年度には、量的難易度の上昇につれ、前頭前野がどのように変化するか研究を進めた。まずは、被検者に、負けじゃんけんをできるだけ素早く行ってもらった。そして、その時間間隔を測定した。その後その時間を約20%づつ延長させた3つの時間間隔を求めた。そしてこれら合計4つの時間間隔を設定した4つの負けじゃんけん課題を施行して前頭前野の活動を測定した。被検者は説明と同意が得られた20名で、順番による馴化の影響を相殺するため、被験者毎に順番を変えて行った。解析に関しては、これまでの質的難易度と脳活動の変化の関連を求めた研究の手法を踏襲した。すなわち、得られたNIRSの信号から、独立成分分析と、バンドパスフィルターを適用して、活動に伴う信号成分を抽出した波形の積分値を脳活動として量的難易度の推移を求めた。
 その結果、特に左の関心領域において、量的難易度の上昇、すなわち作業量の増加に伴い、パラメトリックに血液量が上昇する傾向が認められた。しかし、右の関心領域ではかならずしもパラメトリックな上昇を認めなかった。この結果から、前頭前野はある程度、量的難易度の上昇に伴い、活動量も上昇することが示唆された。
 右の関心領域にさほどの変化が見られなかったことに関してであるが、以下の可能性が考えられる。
 私たちの質的難易度の変化に伴う前頭前野の活動変化を求めた研究においては、右関心領域で、負け条件で強い上昇が認められた。ここから、右関心領域はステレオタイプの行為抑制に特に必要な領域である可能性が考えられる。時間間隔の違いにかかわらず、負けじゃんけん課題は続けられるわけだから、ステレオタイプの抑制は常に要求されるため、右の関心領域にはさほどの変化が認められなかったのではないだろうか。本研究に見られる左右関心領域における変化の違いは課題の性質による可能性が考えられた。
 平成22年度の質的難易度と前頭前野活動変化に関する研究と、平成23年度の量的難易度と前頭前野活動変化に関する研究の成果をまとめると、「ほどほどに難しい課題をできるだけ素早く行うことで、前頭前野は最も大きく活動する」ということになる。
 平成23年度の量的難易度に関する研究は、平成24年5月札幌で行われる日本精神神経学会で発表される予定である。また現在論文化をすすめており平成24年度中に英文誌に投稿予定である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Matsumoto K, Kikuchi S, Miwakeichi F. et al. A Sensitive Indicator of Hemodynamic Changes in the Lateral Prefrontal Cortex using a Modified Version of "Rock, Paper, Scissors" as a Task Load, Journal of Medical and Biological Engineering, 2012, in press.

松本健二、菊地千一郎、三分一史和、石黒真木夫、山内芳樹、久保田文雄、渡辺英寿、加藤敏、あとだしじゃんけん課題遂行時の難易度変化に伴う背外側前頭前野脳血液量の推移 第13回ヒト脳機能マッピング学会 平成23年9月1日、京都

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特に行っておりません。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

石黒 真木夫

統計数理研究所

松本 健二

自治医科大学

三分一 史和

統計数理研究所

山内 芳樹

自治医科大学