昭和631988)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

63−共研−25

専門分類

3

研究課題名

自己回帰モデルによる小児の生体情報処理の発達に関する研究

フリガナ

代表者氏名

オガワ テルユキ

小川 昭之

ローマ字

所属機関

重症心身障害児施設「恵の聖母の家」

所属部局

職  名

園長

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

生体は発達にともなって外的環境の刺激に対応して応答をおこしつつ,あるものはすて去り,あるものは記憶しながら学習し,内的環境を正常状態に保つべく揺らぎながら成長している。脳波,呼吸,血圧,心拍,姿勢などの揺らぎもまた,「生体系」に対してたえず与えられる多種多様の無数の「刺激」(入力)によっておこされる「応答」(出力)と考えることができる。新生児(含未熟児)から思春期に至る正常児や各種疾患患児の“揺らぎ”に自己回帰モデルを適応し,ヒトにおける生体情報処理活動機構の発達にともなう特性や,それぞれの“揺らぎ”間の応答活動の発達変化を知る。


1.目的と研究状況
生体は発達にともなって外的環境の刺激に対応して応答をおこしつつ,あるものは捨て去り,あるものは記憶しながら学習し,内的環境を正常状態に保つべく揺らぎながら成長している。脳波,心拍,血圧,呼吸,姿勢などの揺らぎもまた「生体系」に対して,たえず与えられる多種多様の無数の「刺激」(入力)によっておこされる「応答」(出力)と考えることができる。そこで,我々は新生児出生直後から思春期に正常児や異常児の脳波,呼吸,心拍,経皮酸素濃度(〓)の経時的変動を追求しているが,昨年からの共同研究によって次の成果をえた。
2.成果
(1)出生直後から脳波は20msecの,心拍,呼吸は200msecの,〓は2秒の,それぞれサンプリング間隔でデータを求めると情報の精度を損うことなく,最大の情報がえられた。
(2)脳波で10秒間毎に自己回帰パワースペクトルを求め,ついでその要素波解析を施し,オン・ラインで描記すると,図1に示すようにTotal Power(最上段A)やδ波(B)の変動が明確によみとれた。10時〜15時,20時〜21時の間で変動が著しい。
(3)心拍(左),呼吸(右)のパワースペクトルは脳波の変化に従って静・動睡眠期で経時的に変化しているのがわかる。(図2)
(4)〓は512秒間毎にヒストグラムをとると,図3に示すように,時間の経過に従って,静・動睡眠に揺らいでいるのがわかる。なおこれらの成積は現在日本小児神経学会誌「脳と発達」に投稿中である。
3.本年度の計画と問題点
(1)脳波のサンプリング間隔が新生児で年長児と同様20msでよいかどうか。?
(2)サンプリング周期の相異なる時系列データ間のインパルス応答を求めるには何にすべきか?
(3)上記パラメーター間の制御活動系を知る。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1)小川昭之他:小児脳波集団集団検診高速自動スクリーニングシステムの開発(第7報)基準脳波群の性差,第91回日本小児科学会(1988.5.13)
2)小川昭之他:自己回帰モデルによる小児心拍周期の解析とその発達特性(第2報)新生児期動および静睡眠期の差異。第91回日本小児科学会(1988.5.13)
(3)小川昭之他:脳機能モニターシステムによる,未熟児脳波の発達特性に関する研究第91回日本小児科学会(1988.5.13)
4)石和俊・小川昭之他:自己回帰モデルによる新生児静・動睡眠期2次大脳電図の発達特性に関する研究(第1報)受胎後37〜39週正常健康早産児(第30回日本小児神経学会,徳島1988.6.9)
5)自己回帰モデルによる小児てんかん患者の姿勢制御の解析に関する研究(第1報)(第30回日本小児神経学会,徳島,1988.6.9)


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

私共の研究室では,生直後より生後7日まで脳波(2ch),心拍,呼吸,血圧,体温,経皮酸素濃度を適当なサンプリング周期でAD変換し,その生データをXYプロッターに遂次描記するとともに各パラメーターの自己回帰係数(15次),自己共分散を求めた後生データを消去している。それ故,下記の諸点において統計数理研究所と共同研究を行うことによって解明したい。
1)サンプリング周期の相異なる2つの時系列データ間のインパルス応答もしくはパワー寄与率を求める場合,如何なる方法を適応すべきか。
2)上記の場合,偏相関係数の動きとの対応は?
3)1)の場合パワー特性根をみることが時定数の違う時系列の比較にならないか?
4)上記データへの多次元自己回帰モデルの適応によって,脳波,心拍,呼吸,血圧間のシステムを分析する手法と,それにもとづいた呼吸・循環系の制御系を推定し,実際の新生児脳障害の防止に役立てたい。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

石黒 真木夫

統計数理研究所

園田 浩富

大分医科大学

若山 幸一

大分医科大学大学院