平成182006)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

18−共研−8

専門分類

5

研究課題名

ハイブリッドモンテカルロ法における積分法の研究

フリガナ

代表者氏名

タカイシ テツヤ

高石 哲弥

ローマ字

TAKAISHI TETSUYA

所属機関

広島経済大学

所属部局

経済学部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

 

 

 

研究目的と成果の概要

ハイブリッドモンテカルロ法は1987年にDuaneらによって格子QCD計算におけるマルコフ連鎖モンテカルロ法を実行するために開発された。格子QCD計算には多大な計算量を必要とするが、このハイブリッドモンテカルロ法によって格子QCD計算は格段に速く実行することができるようになり、現在は格子QCD計算の標準的な手法となっている。
ハイブリッドモンテカルロ法は分子動力学シミュレーションとメトロポリス法の2つを組み合わせた手法である。マルコフ連鎖モンテカルロ法でよく利用されるメトロポリス法はローカルなアップデイトを行うが、このハイブリッドモンテカルロ法は、グローバルなアルゴリズムの1つで、すべての変数を一度にアップデイトすることが可能である。
本研究ではグローバルなアップデイトを実行できる点に注目し、従来はローカルなアップデイト法が持ちられている手法にハイブリッドモンテカルロ法を応用する。具体的には時系列モデルのパラメータ推定にハイブリッドモンテカルロ法を利用し、推定が十分に行えるかどうかを調べる。
パラメータ推定の時系列モデルにはGARCH(1,1)モデルを利用し、あらかじめ設定したパラメータの値で時系列データを生成し、その時系列データに対してパラメータ推定を実行した。そして、推定されたパラメータが真の値(設定されたパラメータ値)と一致するかどうかを調べた。
パラメータ推定では、パラメータの従う確率分布を用い、その確率分布に従ってマルコフ連鎖モンテカルロ法を実行し、逐次生成されたパラメータ列の平均値からパラメータの値を推定する。また、パラメータの従う確率分布はベイズの定理より与えられる。
本研究で用いたGARCH(1,1)モデルには3つのパラメータがあり、α=0.3,β=0.5,ω=0.1と設定して時系列データを生成した。そして、データ数500、1000、5000の3つのデータセットを準備して、それらのデータセットに対してハイブリッドモンテカルロ法を利用したパラメータ推定を行った。
パラメータの推定値は、推定に利用するデータ数が少ないと真の値からのズレが大きいが、データ数が多くなると真の値に近づくことがわかった。用意したデータセットの中で最大のデータ数(5000)を用いた場合、推定値としてα=0.289,β=0.493、ω=0.106を得た。これらの値は真の値に近く、ハイブリッドモンテカルロ法を利用した推定がうまく機能していることを表している。
 更に、ハイブリッドモンテカルロ法によって生成されるパラメータ列の自動相関関数も調べ、推定に利用するデータ数が大きくなるとパラメータ列間の相関は小さくなることが判明した。