平成192007)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

19−共研−1

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

7

研究課題名

ハイブリッドモンテカルロ法による経済時系列解析

フリガナ

代表者氏名

タカイシ テツヤ

高石 哲弥

ローマ字

TAKAISHII TETSUYA

所属機関

広島経済大学

所属部局

経済学部教養教育

職  名

准教授

 

 

研究目的と成果の概要

金融時系列データの解析では、モデルを仮定して、そのモデルのパラメータを推定するという方法がよくとられる。ボラティリティが変動し、またボラティリティクラスタリングの特徴を捉えたモデルとしては、GARCHモデルやストカスティックボラティリティ(SV)モデルが存在する。推定方法は、GARCHモデルの場合は最尤法が利用できる。一方、SVモデルの場合は、尤度関数が解析的に求められないので、コンピュータによるマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法が利用されることが多い。MCMC法ではメトロポリス法やギブス法が良く利用されるが、これらはパラメータを順次更新していくローカルなアップデイト手法である。一方、ハイブリッドモンテカルロ法はすべてのパラメータを一度にアップデイトできるグローバルな手法である。SVモデルではアップデイトするパラメータ数が多いのでグローバルなアップデイト法を取ることによってMCMC法の効率を上げることができると期待される。
本研究では、ハイブリッドモンテカルロ法を利用してSVモデルのパラメータ推定を行い、メトロポリス法と比較した。ボラティリティ変数が効率的にアップデイトされているかどうかを調べるために自動相関関数を比較したところ、ハイブリッドモンテカルロ法の方が早く相関がなくなることが分かった。つまり、ハイブリッドモンテカルロ法の方がボラティリティ変数を効率よくアップデイトしていることが判明した。同様にアップデイトされたパラメータの自動相関関数を比較したところ、ハイブリッドモンテカルロ法とメトロポリス法の間では、あまり差がないことが分かった。従って、パラメータ推定に関しては、ハイブリッドモンテカルロ法とメトロポリス法は同等の効率性を持っていると考えられる。一方、ボラティリティ変数に関しては、ハイブリッドモンテカルロ法の方が効率性がよいので、もしもボラティリティ変数に関する何らかの値を計算する必要があれば、ハイブリッドモンテカルロ法は効率の良いアルゴリズムとして利用できると思われる。