平成91997)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

9−共研−115

専門分類

9

研究課題名

木造住宅による炭素固定機能に関する統計的解析

フリガナ

代表者氏名

テイ ヤクグン

鄭 躍軍

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

助手

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

6 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

木造住宅が炭素固定によって地球温暖化の軽減に大きな役割を果たしていることを既に明らかにした。しかし日本では木造住宅の平均寿命が僅か24年であり、外国に比べて遥かに短い。一方、木造住宅解体による廃材の9割が燃やされ、二酸化炭素として大気中に排出されるのが木材住宅のライフサイクルの現状である。本研究では、既存の木造住宅統計情報を系統的に整理し、木造住宅の耐用年数の延長に伴ってその炭素固定機能がどう変わるかを予測する統計的モデルの構築を目指す。


住宅の炭素固定量及び炭素排出量を量的に分析する手法の研究を目的とする。日本における住宅の耐久年数を統計的に調べた上で、その炭素固定量及び排出量が構造や耐久年数などの変化によってどのように変わるかを解明する。今年度の研究成果は以下の通りである。
1. 既存の住宅実態の分析:過去の新設着工住宅の推移や住宅ストック量の変化及び住宅の滅失状況などを分析した上で、次のことを明らかにした。
?日本では戦後から年間新設住宅戸数と床面積が年々増えてきている。
?最初の殆ど木造から非木造の割合が少しずつ増えてきている。
?住宅ストックは増加したものの、1戸当たり床面積が年々減少している。
?滅失住宅は災害によるものから、人為の除去によるものに転じた。
?住宅の耐久年数は全般では35.6年、木造では36.8年、非木造では21.2年となっている。
2. 住宅の炭素固定量及び排出量についての推測: 住宅の炭素固定量を0.19Gtと予測した。なお、住宅のライフサイクルにおける炭素放出量は木造が最も小さく、次いでRCとなり、Sが最大であることが明らかになった。
3. 住宅動態、炭素固定量及び炭素排出量の予測: 年間着工新設住宅を予測するモデルと、新設着工住宅の着工後t年経過したときの残存数を推定するモデルを構築した。
そして耐久年数に対して3つのシナリオを想定して、住宅の炭素固定量、排出量がどう変わるかについてシミュレーションを行った。
今年度の結果は住宅の炭素量が森林の炭素量の約16%に相当することを示した。また、耐久年数の延長は炭素排出量の減少に有効な手段であることを明らかにした。
今後の課題としては耐久年数を延長するために社会的な要因を分析し、住宅の寿命関数を構築する。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

鄭 躍軍・天野正博(1998) 住宅ライフサイクルにおける炭素循環量.環境情報科学, 投稿中

鄭 躍軍他(1997)木造住宅の炭素固定量についての試算. 第108回林学会要旨集:p68.
天野正博他(1997)森林に蓄積される炭素固定量についての試算.第108回林学会要旨:p69.
鄭 躍軍他(1997)住宅の炭素固定量の計量分析.日本行動計量学会第25回大会発表論文抄録集:292-293.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

まず昭和20年以降の住宅統計調査データに基づいて木造住宅の耐久年数を調べ、木造住宅本来の寿命を明らかにする。そして木造住宅の炭素固定機能を定量的に評価する。一方で、様々の可能なシナリオに対応でき、木造住宅の炭素機能の変化を予測するモデルを構築する。さらにモデルのパラメータを推定した上で各種シナリオに対するシミュレーションを行い、木造住宅の炭素固定機能を総合的に評価する。統計数理研究所との共同研究を行う理由は、統計数理研究所には本研究に関連する統計学の諸手法を精力的に行っている研究者が存在すること、及び多数の関連文献と優れる計算機環境の利用が可能であることなどが挙げられる。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

天野 正博

森林総合研究所

岡 裕康

森林総合研究所

久保山 裕史

森林総合研究所

高橋 正義

森林総合研究所

廣嶋 卓也

東京大学大学院