平成172005)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

17−共研−1029

専門分類

6

研究課題名

デロネ分割法による地球物理データ解析手法の開発と大規模ベイズモデルの計算アルゴリズムの最適化 

フリガナ

代表者氏名

ムラタ ヤスアキ

村田 泰章

ローマ字

Murata Yasuaki

所属機関

産業技術総合研究所

所属部局

地質情報研究部門 地球物理情報研究グループ

職  名

主任研究員

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

研究目的:
 重力や地磁気等の大規模な地球物理データは、様々な目的によりデータが取得されていることか
ら粗密の差が大きい。これらのデータから粗密の差に応じた情報を自動的に抽出するため、デロネ
分割法を取り入れた解析手法を開発する。
 デロネ分割法による地球物理データの解析は、次元数の大きな最適化問題となるため、ICCG法
による計算アルゴリズムの開発と、ベクトル演算に適したプログラム開発を行う。
研究成果の概要:
 スプライン関数による重力データの平滑化は、重力データのように分布の粗密に大きなばらつき
がある場合には、密な部分に対応出来るようにスプラインの節点数を多く取って全体をカバーしな
いといけないため、パラメータ数が巨大になってしまうという欠点がある。今回、我々はデロネ
(Delaunay)三角形分割を利用した重力データの平滑化の方法を開発した。これは、重力データの測
点分布からデロネ三角形網を構築し、その三角形網がデータと良く合致し、かつ、各三角形の傾斜
(1階微分)の2乗和と、隣り合った三角形の傾斜の差(2階微分)の2乗和が小さくなるように
押さえるようにする。この時、データとの合致の度合いと滑らかさの度合いを調整(トレードオフ)
するハイパーパラメータの値はABICによって決定する。
 このデロネ三角形分割によるスムージングには次の特徴がある。
1.データ数以上にパラメータが必要とされない。
2.データの粗密に柔軟に対応できる。
3.滑らかさの調整が自由にできる。
 デロネ三角形分割による平滑化の問題は、非常にスパースで大規模な連立方程式を解くという問
題に帰結するが、今回、我々はこの連立方程式の解法としてICCG法を適用した。ICCG法を用いる
ことにより、収束が早くなると同時に、前処理として行う不完全コレスキー分解によって、ABIC
の値を正確ではないが計算することができるという利点がある。ただし、ABICの最小点を探索す
る場合には、ABICが正確に計算されてはいないという点に十分注意する必要がある。
 重力データの平滑化は、ノイズを除去しデータの本質を見るというより、モデルの当てはまりの
良さをABICで数値化して、地殻表層部の平均的な密度分布を推定することが目的である。
 開発した手法を大規模な重力データに適用し、粗密のある重力データからの地穀表層密度推定に
有効であることを確認した。テストフィールドの一つとして、九州の鹿児島地域に適用した結果、
この地域の平均地殻表層密度は2.2g/cm3と推定され、この結果は全体的な傾向としては、スプラ
イン関数を用いたものと調和的である。さらに、スプライン関数を用いた方法では表現できない、
細部の密度構造を推定することができた。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

村田泰章・尾形良彦(2005)ドローネ三角形分割による重力データの平滑化と地穀表層密度推定,2005年地
球惑星合同学会。
村田泰章(2005)デロネ分割法による地球物理データ解析手法の開発と大規模ベイズモデルの計算アルゴリ
ズムの最適化,平成16年度スーパーコンピュータ利用成果報告書,統計数理研究所統計計算技術報告,
RSC-035,統計数理研究所。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

尾形 良彦

統計数理研究所