平成282016)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

28−共研−4203

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

3

研究課題名

コウホート分析モデルの健康施策への活用に関する研究

重点テーマ

次世代への健康科学

フリガナ

代表者氏名

ナカムラ タカシ

中村 隆

ローマ字

Nakamura Takashi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

4千円

研究参加者数

3 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究では、コウホート分析モデル(Age-Period-Cohortモデル、以下、APCモデル)を活用し、従来の健康施策にはなかった年齢・時代・世代特性の視点から、新しく健康施策を展開するための方法論の確立と、地域性をふまえた基盤情報の導出を目指している。

これまで申請者らは、APCモデルを日本全体及び都道府県別データに適用し、分析結果の活用・応用法について追究を重ねてきた。その結果、年齢および世代効果の傾向は、それぞれ健康施策でターゲットとすべき年齢層や世代の特定に役立つこと、時代および世代効果の傾向には、それぞれ集団戦略と高リスク戦略の成果が反映されることを見出した。これらの性質を利用し、APCモデル分析により得られた効果を「地域特性指標の構築」や「将来死亡数の推計」にも応用できることを確認した。さらに平成27年度は、各効果だけでみた死亡率と従来の死亡率(粗死亡率、年齢調整死亡率)で得られる知見の違いについて、それぞれ比較・整理を行った。

平成28年度は、新しく地域間格差の視点から評価できる指標を開発するため、脳血管疾患・心疾患・自殺・肺炎死亡について、APCモデルで分離される各効果のうち、時代効果の推定値に総平均効果を足して死亡率に戻した「時代効果だけからみた死亡率」を用いて、各死因のジニ係数(以下、時代ジニ係数)を算出し、粗死亡率によるジニ係数(以下、粗ジニ係数)や年齢調整死亡率によるジニ係数(以下、年齢調整ジニ係数)との推移を比較した。その結果、以下3点の知見を得た。

(1) ジニ係数は、全体としての死亡率のトレンドの影響を受けず、各年における都道府県間のバラつきをとらえることができる。
(2) 「時代効果ジニ係数」では、リスクの高い年齢層や各地で培われた生活習慣をもつ世代のサイズの違いを除いた評価ができる(「粗ジニ係数」「年齢調整ジニ係数」では、地域格差の立ち上がりの時期や推移のパタンが異なる場合がある)。
(3) 性別(「男性・女性」「男性」「女性」)で比較したり、死亡率と照合したりすることにより、男女格差を知ることができる。

今後の課題として、集団戦略の具体的検討のために、地域がもつ特徴(各効果のパタン、東北〜九州・都市と地方、保健医療福祉データや社会データ)との照合や、高リスク戦略の評価・検討のために、「年齢効果だけでみた死亡率」「世代効果だけでみた死亡率」によるジニ係数との照合が必要である。



 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

平成28年度は、学会及び研究集会において1) 2)の発表 を行った。

1) 三輪のり子・中村隆 (2016). 時代効果を用いた地域格差指標の検討?脳血管疾患・自殺・肺炎死亡?,日本公衆衛生雑誌,63,10,381.
2) 三輪のり子・中村隆 (2016). Age-Period-Cohort分析の健康施策への活用に関する研究 ?地域格差指標の検討?,統計数理研究所共通公開研究集会(重点テーマ2:次世代への健康科学).

平成27年度以前の情報源:

3) 三輪のり子・中村隆・那須郁夫 (2015). Age-Period-Cohort分析の健康施策への活用に関する研究 ?利点と主要死因の分析結果?,統計数理研究所共通公開研究集会(重点テーマ3:次世代への健康科学).
4) 三輪のり子・中村隆・那須郁夫 (2015). わが国の肺炎死亡における年齢・時代・世代要因の影響と地域性,日本公衆衛生雑誌,62,10,213.
5) 三輪のり子・中村隆 (2014). 年齢・時代・世代要因の視点でみたエイジングの地域性?心疾患死亡?,日本公衆衛生雑誌,61, 10, 321.
6) 三輪のり子・中村隆・田中貴子・大江洋介・大野ゆう子(2013). 都道府県別にみた自殺率に対する年齢・時代・世代要因の影響, 日本公衆衛生雑誌,60, 10, 569.
7) 三輪のり子・中村隆・大江洋介・大野ゆう子(2013). 都道府県別自殺率の年齢・時代・世代効果からみた特徴, 第3回自殺リスクに関する研究会予稿集,13-18.
8) 三輪のり子・田中貴子・中村隆 (2012). 秋田県における自殺の死亡動向に対する年齢・時代・世代要因の影響,日本公衆衛生雑誌,59, 10, 434.
9) 三輪のり子・田中貴子・中村隆 (2011). 秋田県における三大生活習慣病の死亡動向に対する年齢・時代・世代要因の影響,日本公衆衛生雑誌,58, 10, 450.
10) 三輪のり子・中村隆 (2010). 47都道府県における脳血管疾患死亡の2035年までの将来動向,日本公衆衛生雑誌, 57, 10, 398.
11) Miwa, N., Nakamura, T. and Ohno, Y. (2009). Prefectural and Japan future time trends in the cerebrovascular disease mortality projections, based on age-period-cohort analyses, Asia Pacific Association for Medical Informatics 2009, Proceedings, P-62.
12) Miwa, N., Nakamura, T. and Ohno, Y. (2009). New indicators for the evaluation of community policies based on period and cohort effects in cerebrovascular disease mortality rates, Japan Hospitals, 28, 79-85.
13) 三輪のり子・中村隆・大野ゆう子 (2008). 脳血管疾患死亡におけるPeriod効果とCohort効果の対策評価指標としての検討(2), 日本公衆衛生雑誌, 55, 10, 13.
14) Miwa, N., Nakamura, T. and Ohno, Y. (2007). Constructing indicators to evaluate community policies based on period and cohort effects on Cerebrovascular disease mortality rates, The 39th Conference of the Asia-Pacific Academic Consortium for Public Health, Abstract Book, 191-192.
15) 三輪のり子・中村隆・大野ゆう子 (2007). 脳血管疾患死亡におけるPeriod効果とCohort効果の脳卒中対策評価指標としての検討, 日本公衆衛生雑誌,54, 10, 417.
16) 三輪のり子・中村隆・成瀬優知・大江洋介・大野ゆう子 (2006). わが国における20世紀の脳血管疾患死亡率の変動要因と今後の動向, 日本公衆衛生雑誌,53, 7, 493-503.
17) 三輪のり子・中村隆・大野ゆう子 (2006). 都道府県別にみた脳血管疾患死亡率のAge-Period-Cohort効果?6都道府県における試み?, 日本公衆衛生雑誌, 53, 10, 605.
18) 三輪のり子・中村隆・成瀬優知・大江洋介・大野ゆう子 (2006). 脳血管疾患の病型別死亡数の将来推計?ベイズ型ポアソンAge-Period-Cohortモデルに基づく?, 第26回医療情報学連合大会抄録集(CD-R), 158 (P18-1).
19) 三輪のり子・中村隆・成瀬優知・大江洋介・大野ゆう子 (2005). 日本の脳卒中死亡数の2050年までの将来推計, 日本公衆衛生雑誌, 52, 8, 611.
20) 三輪のり子・成瀬優知・中村隆・大江洋介・大野ゆう子 (2004). 脳卒中死亡率のAge-Period-Cohort分析(1報)脳梗塞, 日本公衆衛生雑誌, 51, 10, 509.
21) 成瀬優知・三輪のり子・中村隆・大江洋介・大野ゆう子 (2004). 脳卒中死亡率のAge-Period-Cohort分析(2報)脳出血・クモ膜下出血, 日本公衆衛生雑誌, 51, 10, 509.
22) 三輪のり子・成瀬優知 (2004). 出生コホート分析を用いた脳卒中罹患率の検討?富山県脳卒中情報システムより?, 厚生の指標, 51, 11, 10-16.
23) 三輪のり子・成瀬優知 (2003). 出生コホート法を用いた脳卒中発症率の比較?富山県脳卒中情報システムより?, 日本公衆衛生雑誌, 50, 10, 517.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

なし。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

三輪 のり子

東京医療学院大学