平成202008)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

20−共研−2014

分野分類

統計数理研究所内分野分類

b

主要研究分野分類

2

研究課題名

ランダム行列の固有値分布の拡張アンサンブルモンテカルロ法による研究

フリガナ

代表者氏名

イバ ユキト

伊庭 幸人

ローマ字

Yukito Iba

所属機関

統計数理研究所

所属部局

モデリング研究系

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

50千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)は,ベイズ統計や統計力学の分野だけでなく,高次元の確率分布からのサンプリングを必要とする分野であれば,いかなる分野でも応用可能である.一般に,直接のシミュレーションによっては分布の裾の必要な領域のサンプルが得られないような場合に,「珍しいサンプル」に重みをかけてサンプルすることが考えられるが,そのようなサンプリングを実装する場合には,MCMC,なかでも拡張アンサンブル法とよばれる手法群がきわめて有用であり,さまざまな分野でのブレークスルーにつながれることが期待される.
 本研究では,この考え方をランダム行列の固有値分布,特に最大固有値の分布について適用し.以下のような結果を得た.いずれの研究においても,拡張アンサンブル法の一種であるマルチカノニカル法を用いた.結果は物理学会やベイズ統計の国際学会(ISBA2008)で発表した.
(1) 疎行列や各要素が独立に一様分布する行列など,定量的な解析的な扱いが容易でない場合についても,提案した手法によって,最大固有値の分布の裾確率(大偏差の確率)が極端に小さな値まで数値的に求められることを示した. 
(2) 「ランダム最大固有値が負になる確率を求める」という問題は安定性に関係して,宇宙論や生態学で重要であるが,その問題への応用を試みた.解析的な表現(クーロンガス表示)によって漸近論や数値計算が可能なGOEの場合についてはそれらとよく一致する答が得られた.また,従来の方法では極端に小さい行列についてしか数値計算ができない疎行列の場合や各要素が独立に一様分布する行列の場合についても有効性が確かめられた.
(3) グラフのラプラシアン行列の第2固有値の分布についても同様の問題を考えた.第2固有値と第1固有値のギャップを数値的に最適化しexpanderと呼ばれるグラフを構成するという既存研究があるが,これはそのサンプリングバージョンに相当する.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

斉藤稔,伊庭幸人
拡張アンサンブル法によるラマヌジャングラフのエントロピー
日本物理学会秋季大会 盛岡 2008.9.23

斉藤稔,伊庭幸人,福島孝治
拡張アンサンブル法によるランダム行列の最大固有値分布II
日本物理学会 第64回年次大会 東京 2009.3.30

Yukito Iba
Rare event sampling by extended ensemble MCMC
9th World Conference of the International Society for Bayesian Analysis (ISBA2008)
Hamilton Island, Australia
2008.7.24

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

菊池 誠

大阪大学

斉藤 稔

大阪大学

福島 孝治

東京大学