平成21990)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

2−共研−8

専門分類

1

研究課題名

ランダムクラスターとその極限定理の研究

フリガナ

代表者氏名

ヒグチ ヤスナリ

樋口 保成

ローマ字

所属機関

神戸大学

所属部局

理学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

11 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

確率場,及びそのレベルセットに対するパーコレーション問題を中心に,そこに現れる種々のランダムな図形に関する極限定理を考えたい。多くの場合,これらの問題は相転移の問題と密接に関連しており,相転移現象の背後にある基本的な構造を極限定理をとおして理解することを目的とする。


平成2年12月17日(月)〜19日(水)の期間,本研究所に於いて研究集会をもち,パーコレーションに関する最近の結果の紹介や共同研究員の方々の研究成果の発表を中心として,討論研究を行った。やや勉強会的な雰囲気が強かったが,この分野での研究の基本的姿勢を決めるという意味で,意義のある集会であったと思う。
以下,研究集会での講演に関して報告させて頂く。
(1)千代延大造(名大理):Banach空間値のi.i.dに対するlarge deviationに関するBolthausenの結果の紹介とその一般化についての報告。rate functionのHessianが退化した場合の話。まだ面白い応用はないが,重要な問題。
(2)種村秀紀(千葉大理):ランダム環境の中のランダムウォークの中心極限定理の報告,時空ともに連続な場合の話,極限の非退化性を示すのにパーコレーションの話に帰着させている。ここで用いたDirichlet形式の評価の方法は一般化の可能性が有るのではないかと,討論された。今後の研究の発展が期待される。
(3)黒田耕嗣(慶応大理工):Grimmettの最近のパーコレーションの結果の紹介,パーコレーションでは最近で最も重要な結果の一つ。
(4)原隆(学習院大理):十分高次元のパーコレーションでは臨界指数は平均場のそれと一致することの報告(既に発表済み)。同じ手法のself avoiding random walkに関する彼の最近の結果は臨界次元を(ほぼ)決定する仕事として高く評価されている。(準備中)
(5)真鍋昭治郎(阪大教養):確率過程や力学系のfunctionalの族の中心極限定理を1−formのdualの極限定理として見る時,極限の非退化性をどう調べるかという問題提起。(2)との関連が討論された。
(6)内山耕平(東工大理):extinction of annihilating−branching random walkの報告。branching processに関する知識はこの分野では非常に重要である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1.T.Hara:Probab.Theory and Rel.Fields,86,337−385(1990)
2.T.Hara and G.Slade;Cormn Math.Phys.,128,333−391(1990)
3.H.Tanemura;Central limit theorem for a random walk with random obstacles in 〓, Preprint
4.S.Manabe and Y.Ochi;The central limit theorem for current valued processes induced by geodesic flows,Osaka J.Math.,26(1989),191−205.


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

多パラメータ確率場(各点独立な場合を含む)のレベルセットのパーコレーション確率はレベルの高さに関し連続性があると期待されている。この連続性が確率場のどの様な性質と関係するのかを調べる。臨界的な高さでは無限クラスターの形状の違いが極限定理の違いを生む。知られている例ではこのクラスターの上でのランダム・ウォークが拡散の速度を遅くすることがある。中心極限定理(確率過程に対する)の整備により,この事情をより明解に理解したい。
この様な研究のために数理統計学と確率論の協力が必要であり,当研究所の清水教授との共同研究は非常に期待される。
対象のランダムな図形の複雑さのために大型計算機によるシミュレーションも大きな助けになるものと思う。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

内山 耕平

東京工業大学

黒田 耕嗣

慶應義塾大学

志賀 徳造

東京工業大学

清水 良一

統計数理研究所

高橋 陽一郎

京都大学

種村 秀紀

千葉大学

千代延 大造

名古屋大学

原 隆

学習院大学

眞鍋 昭治郎

大阪大学

宮本 宗実

京都大学