平成212009)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

21−共研−2003

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

1

研究課題名

面と空間の分割および関連する統計的諸問題の研究

フリガナ

代表者氏名

イソカワ ユキナオ

磯川 幸直

ローマ字

ISOKAWA YUKINAO

所属機関

鹿児島大学

所属部局

教育学部 数学科

職  名

教授

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

(A)球面をn個の球面凸多角形に分割したときにできるすべてのネットワークの中で、ネットワークの長さ L (= 各面の辺の長さの合計)が最小になるものを求めよ。この問題は、古くFejes Toth(1960)により提出された難問である。Fejes Toth 自身は n = 4, 6, 12の場合に解決し、解が正多面体で与えられることを見出した。Isokawa(2004)は、n = 5の場合に、解が正3角柱で与えられることを証明した。今回の共同研究では、次の3つの事柄を証明した:
(1)必ずしも正多角柱ではない多角柱で与えられるネットワークの中でL が最小になるものは正多角柱で与えられる事(ただしn が 10 以下であるという技術的な仮定を置いた)、
(2)必ずしも正多角錐ではない多角錐で与えられるネットワークの中でL が最小になるものは正多角錐で与えられる事(ただし同様の技術的な仮定を置いた)、
(3)n = 7 の場合、局所的な最小が正5角柱、および 「3角形1個、4角形3個、5角形3個」からできる多面体で与えられる事、
(4)n = 8 の場合、正8面体は局所的な最小の解を与えない事。
実はFejes Tothの問題は、その定式化に不十分なところがある。一般の n に対して、そもそも球面をn個の球面凸多角形に分割できるか否かは、多角柱と多角錐の場合を例外として自明ではない。しかし、これに関しては、Heppes(1999)が、それが可能であることを証明している。今後の問題としては、n が比較的小さな数である場合にFejes Tothの問題の厳密解を求めることも興味深いが、さらに n が大きな数の場合に近似的な最小解を求めるアルゴリズム、および関連するGibbs確率分布に関して研究することが重要であろう。
(B)これまで空間分割の問題は、ほとんどの場合、空間が一様であることを前提にして研究されてきた。この前提は幾何学的には十分に納得できるが、現実の問題では満たされないことが多い。たとえば、あるポテンシャルの場の基での空間分割を研究する価値が有る。今回は、その予備的な研究として、一様な重力場の基では、最速降下線が幾何学的での直線と同じ役割を果たすと想定してみた。しかし、最速降下線は一般には複雑な微分方程式で記述され、その解を具体的に求積することは不可能である。そこで手始めに、最速降下線を記述する微分方程式がどのような場合に求積できるかを考察した。もちろん求積の意味が問題となるが、ここでは楕円関数で記述できる事と考えた。結果は、鉛直軸に関して回転対称な曲面上で、最速降下線を楕円関数で記述できるのは、曲面が円柱面、円錐面、または球面のどれかの場合であることを見出した。今後の問題は、これら2次曲面を最速降下線により分割する事である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

(A) Fejes Tothの問題に関して。
結果 (3) は、
Y.Isokawa “Shortest Spherical Network of Pentahedra”, 鹿児島大学教育学部紀要第56巻(2004)
結果 (1),(2),(4),(5)は、
ISM Symposium “Stochastic Models and Discrete Geometry”March 1-2, 2010
で発表したものを、現在論文に準備中。

(B)最速降下線に関して。
Y.Isokawa “A Generalization of the Classical Brachistochrone Curve: A Preliminary Study”, 鹿児島大学教育学部紀要第61巻(2010)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

種村 正美

統計数理研究所